夏はトレイルラン、冬はスキーというアスリートスタイルは、ヨーロッパでは多くみられるものの、日本ではまだ少数派ではないでしょうか。THE NORTH FACEのアスリート、上田絢加選手はスカイランニングのトップで活躍する傍ら、SKIMOでもオリンピック出場を目指す、ヨーロッパスタイルの二刀流で活躍中です。一年中山を楽しむライフスタイル、そしてランとスキーの相乗効果についてお話を伺いました。
SKIMOで2026ミラノ・コルティナ冬季五輪を目指す
ーー上田選手はスカイランナーというイメージを持っている人が多いと思いますが、学生の頃から陸上とスキーをやっていたんですよね。
上田 はい、そうです。社会人になってから夏場はスカイランニングに取り組んで、オフシーズンのトレーニングとしてSKIMO(Ski Mountaineering、山岳スキー競技)をするようになりました。直近はSKIMOでも日本選手権でトップ3には入っていたので、SKIMOが2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ・オリンピックの種目に採用されたのを知って、このチャンスは見逃せないと思い、オリンピック出場を目指そうと思いました。
ーー夏はスカイランニング、冬はSKIMOという活動内容は変わらないけれども比率に変化が起きる感じですか?
上田 そうですね。気持ちの比率という感じですかね。夏はトレイルを走りますけど、SKIMOの比率が高まりましたね。昨年は走る日数を減らして技術的なトレーニングもかなり入れたのですが、今年はもう少ししっかりスカイランニングもやりつつ技術的なトレーニングも追加でやっていくつもりです。自分のベースになっているのは、やはりランニングですから。
ーー2022/23シーズンから冬にヨーロッパに遠征してSKIMOの大会を転戦しているんですよね。
上田 はい、先シーズンは2月から4月までなので短かかったのですが、そういう意味で言うと2シーズン目でしたね。
ーー世界で戦ってみてどのような手応えをお持ちですか?
上田 そうですね、ヨーロッパの環境にも慣れてきたので確実に成長できていると思います。でも、技術面はもちろんですけど、ベースとなる体力ももっと底上げしないといけないですね。ですから、今シーズンは夏場のトレイルもしっかり走りこみたいと改めて思いました。
ーーオリンピックを目指している中で現在位置はどのあたりですか?
上田 難しいですね(笑)。先シーズンは病気でほぼヨーロッパのワールドカップに出られなかったのですが、その割には順調に来ていると思っています。混合リレーで国枠を取れるのは10位以内なんですが、今年の日本の成績は9位なのでしっかり戦えていると思います。
ーー今の課題はどんなところですか?
上田 バーンコンディションへの対応ですね。ヨーロッパの選手は小さい頃からアイスバーンで滑っているので、下りがすごく速いんです。アイスバーンでは登りも本当にいいポジションにいないと滑ってしまい、うまく力が伝わらないんです。ヨーロッパの選手と日本の選手とフォームを比べるとかなり違うので、学ぶべきところはたくさんあります。
ーー今年もグリーンシーズンは日本でランニングを中心に活動して、また冬にヨーロッパ遠征ということですね?
上田 はい、来シーズンも冬場はヨーロッパを拠点に活動しようとは思っています。次のシーズンでしっかりオリンピックの国枠をまず獲得するところを日本チームとして頑張っていきます。
スカイランニングとSKIMOの相乗効果
ーー今年のグリーンシーズンの取り組みを教えてください。
上田 登りの強化にもう一度取り組みます。やっぱり自分のベースとなるところはランニングなので、ランニングだと追い込みやすいので、しっかりやっていきたいです。
ーースキーとランニングで技術的な共通点はありますか?
上田 ありますね。SKIMOに取り組んだことによって、ランニングでの登りのポジションが改善した実感があります。ランニングでは力まかせで登っていたところを、SKIMOのように重心の傾け方に気をつけて登るトレーニングをしたことで、より力を使わずに登れるようになりました。走りの効率が上がった実感があります。それとポールワークも共通しています。日本のトレイルランナーはポールを前の方につく人が多いのですが、私はSKIMOで後ろでさばく感じを覚えたら、より効率が上がりました。
ーーヨーロッパではトップランナーでも冬場はスキーで活躍している選手が多いですよね。
上田 日本では多くないですが、私はこのスタイルをしっかりこれからも続けていきたいです。
ーーTHE NORTH FACEのアスリートになったわけですが、どんなきっかけがあったのですか?
上田 現在所属している中央カレッジグループは「やってみて考える」というのが教育方針なんですね。前職で現在もサポートしていただいているサントリーも「やってみなはれ」という価値観を大切にしています。THE NORTH FACEも「NEVER STOP EXPLORING」というタグラインがあるんです。私も人生においてチャレンジすることをすごく大切にしているので、それを応援していただけるということが、一緒にやらせていただきたいと思ったポイントでしたね。
ーーTHE NORTH FACEのトレイルランニングシューズの感想を教えてください。
上田 シチュエーションによって「SUMMIT VECTIV™ PRO(サミット ベクティブ プロ)」と「SUMMIT VECTIV™ SKY(サミット ベクティブ スカイ)」を使い分けています。スカイランニングでは「SUMMIT VECTIV™ SKY」を履くことが多いです。軽くてグリップも効きます。岩場の凹凸も足裏でしっかり感じながら攻めることができます。「SUMMIT VECTIV™ PRO」は走れるトレイルや林道やロードでもいい感じです。ロッカー形状でしっかり転がってくれて、カーボンプレートも反発してくれるので、無駄な力を使わずに次の足が出てくれます。
(左)SUMMIT VECTIV PRO 🔗メンズ 🔗ウィメンズ
(右)SUMMIT VECTIV SKY 🔗メンズ
ーーこのグリーンシーズンの大会出場の予定を教えてください。
上田 直近では富士登山競走にエントリーしています。あとは片品(群馬県)の大会は出場します。
ーーグリーンシーズンの活躍も楽しみにしています。ありがとうございました。
上田絢加(うえだ・あやか)
1993年生まれ。大学在学中にランニングに親しみ、社会人になってからスカイランニング、SKIMO(スキーモ・山岳スキー)に親しむ。2018年にスカイランニングアジア選手権で3位になったのをきっかけに、スカイランニングの選手活動を開始。現在はスカイランニングも続けながらSKIMOを主軸に2026年ミラノ・コルティナダンぺッツォ五輪出場を目指す。中央カレッジグループ所属。
2023年スキーモ世界選手権日本代表。2022年白馬八方スーパーバーティカル優勝
2020年・2022年スカイランニング世界選手権日本代表
2020年スカイランニング選手権日本選手権〈SKY〉優勝、2021年スカイランナージャパンシリーズ史上初の〈SKY〉〈VERTICAL〉両種目での年間チャンピオン
Photo:Doryu Takabe
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