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【Report】トレイルアクティビティとビアガーデンを楽しむ 「HAKONATURE TRAIL FES」@箱根

箱根湯本駅から無料シャトルバスでわずか1分、徒歩でも7分程度という好立地に、箱根の自然体験アクティビティの拠点「HAKONATURE BASE(ハコネイチャーベース)」があります。2023年4月に小田急電鉄が開業したこの施設は、2018年に閉館した「北原おもちゃミュージアム」をリノベーションしたものです。

 

HAKONATURE BASE

 

木々に囲まれた2階建ての建物には、アクティビティ案内カウンター、カフェラウンジ、箱根エリア初となるTHE NORTH FACEのショップ、シャワーブース(男女各2室)、コワーキングスペース、イベントスペース、そして広々とした芝生のガーデンが整備されています。

カフェでは、「GORA BREWERY」のクラフトビールや、SDGsな取り組みをしている「GOOD COFFEE FARMS」のコーヒー、小田原の素材を使ったジュースなどを提供。マイボトルを持参すれば無料で給水できるサービスも行われており、環境への配慮が随所に感じられます。アクティビティの前後に立ち寄って準備を整えたり、シャワーを浴びてリフレッシュしたり、カフェでゆっくりと過ごしたりと、箱根でのアウトドア体験をより快適にサポートする施設として機能しています。

 


HAKONATURE TRAIL FES

2025年11月23日(日)、この「HAKONATURE BASE」を拠点に、トレイルアクティビティとビアガーデンを組み合わせた複合型イベント「HAKONATURE TRAIL FES」が開催されました。当初は5月に開催予定でしたが、天候不良により延期となり、満を持しての開催となりました。

トレイルランニングスクール、グループラン、登山道整備体験の3つのアクティビティと、イベント後のビアガーデンという、箱根の自然を丸一日楽しめるプログラムが用意されました。

今回のイベントは、「HAKONATURE BASE」、東京のトレイルランニング専門ショップ「Run boys! Run girls!」、「THE NORTH FACE」の3社協力により開催されました。「Run boys! Run girls!」の松井裕美氏は、イベントに関わることになった経緯をこう語ります。

「HAKONATURE BASEがトレイルランナーのハブになればいいなという話がまずありました。そこで私たちのようなトレイルランニングの専門ショップが関わらせていただくことで、より多くのランナーに届けられるのではないかという話になりました。「Run boys! Run girls!」が毎週木曜日に開催しているグループランのように、『みんなで一緒に箱根に行こうよ』という気軽さで、普段やっていることを箱根でも一緒にやる。『そんなに遠くないよ、山も近くていいところだよ』ということを伝えたいですね」

 

「Run boys! Run girls!」の松井裕美氏

 


トレイルランニングと箱根の山を知るプログラム

箱根という土地を走らせてもらうので、箱根の山のためになることもしたい。松井氏は、このイベントに登山道整備を取り入れた理由について、こう説明します。

「最近になって、箱根でトレイルランニングに関わるメンバーが地道な活動を経て、ようやく市民権を得てきたように思います。それは私たちだけの力じゃなくて、本当にいろんな人たちの力があってこそなんです。箱根に限ったことではないのですが、トレイルを整備して大事に扱っている人たちがいるからこそ、ランナーもハイカーも楽しめるということをあらためて感じていただきたいということが、このトレイルフェスの大きなテーマでもあるんです。今回のトレランスクールもグループランも、整備している現場を通過するコースが設定され、参加者が『こんな風に整備してるんだな』ということを実際に見られるようになっています」

メインプログラムとなったのが「HAKONE TRAIL SCHOOL by THE NORTH FACE」です。THE NORTH FACEアスリートの土井陵氏を講師に迎え、初心者向けのトレイルランニング・スクールが開催されました。

 

THE NORTH FACEアスリート、土井陵選手。 Photo:Ryo Hirano

 

「HAKONATURE BASE」から箱根登山鉄道で山を登り、登りが少なめで下りが多めの初心者に優しいコースを走りました。このスクールには魅力的な特典が用意されており、イベント後のビアガーデンでのドリンク(ビールまたはソフトドリンク)、シャワー利用もしくは箱根湯寮の割引券、そしてTHE NORTH FACEのシューズやバックパックがレンタルできました。

 

THE NORTH FACEのシューズとバックパックのトライオンを実施。

 

「土井陵さんが講師を務めてくださって、トレイルランニングを教えながら、ギアを試すことができています。トレイルランニングのマナーや、走り方で意識した方がいいことなどを伝えてくれる盛りだくさんの内容です。日本トレイルランニング界のトップランナーである土井氏に直接質問できる貴重な機会です」(松井)

 

講習はテクニックから装備の使用法まで多岐に渡る。 Photo:Ryo Hirano

 

同時に開催されたのが「HAKONATURE FOREST CRUISE!!」です。これは「HAKONATURE BASE」で定期開催されているトレイルグループランの特別編。

トレランスクールと同じコースを走りますが、こちらは参加者同士がおしゃべりしながら楽しむスタイル。一番遅い方にペースを合わせるため、初心者でも安心して参加できる内容となっています。

「Run boys! Run girls!」のメンバーが主軸となって進めるこのプログラムは、「HAKONATURE BASE」で何度も開催されており、今回の参加者もリピーターが多かった様子。普段から箱根の山を走っているメンバーも参加するため、トレイルランニング仲間を作りたい方にも適したプログラムとなっています。

そして、もう一つのプログラムが「HAKONATURE TRAIL FES~登山道整備を体験しよう~」です。普段何気なく歩いたり走ったりしているトレイルが、実は誰かの手によって整備されていることを実感できる貴重な機会です。当日のトレランスクールやフォレストクルーズも、参加者が整備したトレイルを通るコース設定で、整備する人の努力で道が走りやすくなり、それをランナーやハイカーが利用する喜びを感じられる内容となっています。

講師を務めた「自然公園財団箱根支部箱根ビジターセンター」の加藤和紀氏によれば、箱根の自然に関係している環境省、箱根町、神奈川県の3つが主体となって、15年ほど前に始まったとのことです。

「一般の方が登山道整備の体験をできるようになったのは、HAKONATURE BASEができ上がってからです。このようなイベントを通してトレイルの保全活動に興味を持っていただけると嬉しいです」(加藤氏)

 

「自然公園財団箱根支部」の加藤和紀氏

 

 


整備体験の意識と自然を味わう時間

松井氏は、登山道整備の体験についてこう語ります。

「トレイルランナーも登山者も、登山道の整備をしてみたいという漠然とした憧れはあるんです。でも、どこで手伝えるのかもわからないし、道具も持ってないし、勝手にできないし……。HAKONATURE BASEがこういうイベントを立ち上げてくれたことで、登山道整備には、どんな視点でコースを見るのか? どんな道具が必要か? ということを実際に学べるとてもいいチャンスになっていると思います」

 

整備に使う素材は全てその場で調達する。

 

体験ですから、実際の作業は誰でもできる内容です。資格が必要なチェーンソーなどは使いません。現場で必要な材料を集める作業から始め、整備をしていくのですが、どのような形にすれば長持ちするのかという考えを持ちながら、段階を踏んで作業を進めていきます。

 

えぐられたトレイルを修復している様子。

 

箱根では従来の登山道整備方法に近自然工法という考え方を取り入れつつ、自然の本来持つ再生能力を活用した登山道補修をしています。これは、歩きやすい道を作るというよりは、自然に近い状態に戻すという考え方だそうです。活動に何度か参加すると「こうしていったら自然は回復するかもしれない」「こうしたら植物が根付いていくかもしれない」という思いが生まれてくるのだといいます。

加藤氏は、登山道整備体験がもたらす効果について、次のように語ります。

「登山者の皆さんで守っていける登山道というやり方が、箱根のこれまでのスタイルでした。まさに人の力なくしては自然も守れなくなってきている状況だと思います。参加された方々は、自然を守っていきたいという考えを強く持たれていると感じますし、意識をさらに高め、自然保護の活動により一層関わっていかれるようになると思っています。箱根の登山道やハイキングコースは多種多様で、周辺には約20のコースがあります。狭い地域の中でこれだけのバリエーションが楽しめるのは珍しいことです。四季折々、1年を通して楽しめる自然の景観や美しさを知っていただき、今度は自分がその自然を保全する立場になっていただけると嬉しいです。自然公園財団箱根支部としても、こういったイベントで箱根の自然についてお伝えするのは効果的だと思っています」

 

 


これからのHAKONATURE BASEと自然との向き合い方

夕方からは、すべてのプログラム参加者が集まる「FOREST BEER GARDEN」がスタート。「HAKONATURE BASE」と「GORA BREWERY PUBLIC HOUSE」の2会場で開催され、クラフトビールや大人気のピザ、小田原産鹿肉のジビエドッグ、子供向けには焼きマシュマロも用意されました。20時まで営業されたため、アクティビティに参加しなかった方や、外輪山帰りで普段は営業時間が合わない方も気軽に立ち寄れる設定となっていました。

 

地元、「GORA BREWERY」のクラフトビールで乾杯。

 

「HAKONATURE BASEの隣にはGORA BREWERYさんがあって、美味しい料理とクラフトビールをいただけます。トレイルランニングの締めにぴったりだと思います。HAKONATURE BASEにはシャワールームもついているので、走った後にシャワーを浴びてビールを飲んで帰れるという、アクティビティが全部完結できるんです。ここは本当にトレイルランニングのハブとして活躍できる場所だと思います。まだまだHAKONATURE BASEを知らない方も多いので、さらに認知してもらえるようにイベントなどもどんどん開催していきたいですね」(松井)

 

箱根唯一のクラフトビール醸造所「GORA BREWERY」のビール。

 

今回の「HAKONATURE TRAIL FES」は、単なるトレイルランニングイベントではなく、箱根の自然を多角的に楽しむことができる複合型イベントとして企画されました。トレイルを走る楽しさ、仲間と繋がる喜び、自然を守る活動への参加、そしてアクティビティ後の交流という、一日を通して箱根の自然と向き合える内容となっていました。

特に登山道整備体験は、トレイルランニングやハイキングを楽しむ人々にとって、自分たちが利用するフィールドの維持管理について考える良い機会となりました。参加費の一部が保全費用に充てられるグループランも含め、持続可能な形で箱根の自然を楽しむための取り組みが随所に見られました。「HAKONATURE BASE」は、箱根の自然を愛する人々の新たな拠点として、これからも多くのストーリーを紡いでいくことでしょう。

 

Photo:Ryo Hirano

 

■HAKONATURE:https://hakonature.jp/
■Run boys! Run girls!:https://rb-rg.jp/
■GORA BREWERY:https://itoh-dining.co.jp/gorabrewery/
■自然公園財団箱根支部:https://activity.hakonature.jp/

 

 

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