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【Report】斑尾高原トレイルランニングレース2017(50k)

斑尾高原トレイルランニングレース2017(50k)
~ゆみの初ロングトレイル~

2015年、この大会のショート(16km)に私たちランニング仲間と一緒に参加したゆみちゃん。トレイルはまだ初心者。ショートのコースを楽しく走り終わり、まだ50kmを走っている仲間の応援に回る。ラスト2.5km地点、斑尾高原ホテル前で待ち構える。私はコース中盤で膝が痛くなってしまい、やっとの思いで走っていた。「みほさーーーん!!!」。涙を流しながら名前を呼んでいる。「みほさんがこんなにツラそうにしているとこ見た事が無い……」。声援を送った後、先回りしてゴールで出迎えてくれた。「おめでとう!!」。

……あれから、2年。今度はゆみちゃんも50kmへ挑戦。未知の世界。高尾山へは同じくランナーである旦那さんを連れて練習に行き、大会1週間前にロードを25km走ってみた。けれど、50km……。途方に暮れている。そう言っていた。

【9月30日】
大会会場である斑尾高原では立ちはだかる斑尾山を背にゴールゲートが設置されている。受付を済ませて、青空の下、みんなでお昼ご飯を食べる。こうしている間にも日に焼けてくる。一旦、大きな荷物を置きにペンションへ移動。再び会場へ戻って、コースガイダンスを聞く。何処のエイドで何が出るのかが大事。「4A:シャインマスカット・笹寿司」の説明にザワつく会場(笑)。
18:00からは前夜祭。炭水化物がこれでもかっ!?と言うくらい用意されている。明日走るなんて信じられない。ペンションに戻って、明日の荷物をまとめる。「このジェルどうなのかな?」。とゆみちゃんが言っている。それ、飲んだことある? 普段飲まないものは止めた方が良いよ。気持ち悪くなったりするから。自分の経験から強めに忠告したけれど「え?じゃあ、今飲んでみようかな」。Shotzを水に溶いて飲んでいた…… 。 22:30pmには部屋の電気を消す。おやすみなさい。すや~

【10月1日】
4:00am起床。
いそいそと身支度を始める。数日前「置いて行かないで。みほさん、名ペーサーなんでしょ!?」。と言われたので一緒に走ることに。2人でブルーのウェアで揃えてみた。朝方は寒い。シェルを着込んで、スタート地点へ向かう。朝食を済ませて、トイレに並ぶ。順調。
ゆみちゃんに緊張した様子は見られない。いつも通り。6:30amいよいよスタート。仲間たちと健闘をたたえ合いつつ、「必ずココに戻ってくる….!!」。そう心に誓いゲートをくぐった。
スタート直後は登り坂。ゆっくり走っていたけれど、ゆみちゃんの呼吸が荒くなってきた。歩こう。他のランナーたちに抜かされていく。焦らない。ゲレンデを登り切ったところで、16kmのショートコースを走る仲間たちが応援に来てくれた。「行ってきます!」。

前日に引き続き、大会当日もこれ以上ないくらいの晴天。トレイルに入ると、暑すぎず寒すぎず…走っていても快適で、朝の空気はとっても爽やか。木漏れ日が美しく、ふかふかのトレイルは最っ高~に気持ち良いぃ~♪ 全ての人々にこの感覚を味わってもらいたい、そう思わずにはいられない。下り基調でどこまでも走れてしまうけれど、まだまだ先は長い。後ろから着いてくるゆみちゃんの様子を確認しながら、飛ばさない様にトレイルを堪能する。

7:30am。そうこうしているうちに、1A(7.7km地点)に到着。
「もうエイドなの!?」。ゆみちゃんも驚いている。給水していると「Finisher Pacer」。というゼッケンを付けたおじさんを発見。「あの…Finisherってどのくらいのタイムでゴールするんですか?」。話掛けてみる。「9時間ちょうどくらいだね」。なるほど。抜かれちゃダメなんだね。「Finisher Pacer」おじさんが「次のエイドはトイレがすごい混むから行く人はココで済ませて!」。付近にいる選手たちに案内している。「え? じゃ私行ってくる!」。アドバイスに従うゆみちゃん。その隙におじさんは「はい、行くよー」。と、エイドを出てしまった。「お待たせ! ごめんね、みほさん。おじさんが案内したから、結局みんなトイレに並んじゃって……」。そうだね、思いの外、長居してしまった。おじさんを追いかけよう。

比較的フラットなトレイルが続き、気持ち良く走り続ける。ゆみちゃんは、距離を長めに空けて着いてくる。次第に登りの林道に差し掛かった。あ! 背中に「Finisher Pacer」の文字を背負ったおじさん。チャンスとばかりに着いて行こうとしてみたけれど、ゆみちゃんとの距離が離れていったので歩くことにした。ゆみちゃんが「あのPacerの人がいると気持ちが焦っちゃう。ただただ焦るだけ」と。あのペーサーの後ろにいちゃいけない。2Aで追いついて前に出よう。長い林道が続く。早足で歩く。スタスタ。ココは休憩しているようなものだね。「そうなの?」。そうじゃない?? 登り切って少し走った先に、選手が数人立ち止まっている。景色が開けて、紺碧の野尻湖が視界に飛び込んできた。みんな写真を撮っていた。まずはここまでの御褒美だね。この先、もうすぐエイドだ。

9:00am。2A(18.5km地点)到着。
事前に設定したタイムスケジュール通り。良し良し。あ、おじさんもいた! しめしめ。ココでおじさんより先にエイドを出る。このコースで1番の登りになる斑尾山にアターック! ここでどれ位効率的に身体を動かせるか。思っていたよりペースがゆっくり。後ろから来る人に「お先にどうぞ~」。と道を譲っている。なるほど……。それを何度か繰り返したところで「ゆみちゃん、どうぞじゃなくて登ろっか!?」。声を掛けた。「……はぁい(*`・з・)」。あんまり煽りたくはないけれど、時間的に余裕はない。あ!? 本物のペーサーだ! おじさんにも追いつかれてしまった。「え? 本物って何??」。もはや死神のよう!? 登り始めて45分程で明神岳に到着。斑尾山の山頂はもう少し先だけど、ここまで来たら登り切ったようなものだ。「とりあえず制覇!」。ゆみちゃんもほっとした様子。ピークを越えたら「ベイマックス走法」で下って行くのみ。

*説明しよう!
ベイマックスとは、デ○ズニーのアニメ映画に登場するロボットで、その走る姿がゆみちゃんと酷似していることから「ベイマックス走法」と名付け、走り出す際に「ベイマーックス!」。とひと叫びすることによって自ら気合を注入するのである。エイドまでゲレンデを延々下る。ずきっ! 不穏だった右膝が痛み出す。う~ん、困ったね。

10:30am。3A(23.9km地点)到着。
ここは第一関門。11:30amの関門時間まではまだあるけれど、タイムスケジュールより30分押している。元々、制限時間の30分前にゴールするように設定しているので、30分押したということはギリギリでゴールするということ。「今のところキツかったぁー!! すごくキツかったよねぇ!?」。ゆみちゃんが言っている。長いゲレンデの下りで疲れてしまった様子。これは後半かなりキツイ思いをすることになるかな。私も人の心配をしている場合ではない。痛みの出てしまった右膝にテーピングをしつつ、エイドのリンゴを頬張る。むむ!? とっても美味しいじゃないかっ!! はむはむ。時間がないので、もう少し食べたいのを我慢して、ゆみちゃんと2人でリンゴを一かけら手に持ちエイドを後にする。「あれ、死神…… 基、Finisher Pacerどこ行った?」。ゆみちゃんと話をしていると、後ろの選手が「トイレに行ったみたいですよ」。と教えてくれた。後ろか。おじさんとのデッドヒートは続く。

今まで完璧なまでのふかふかトレイルだったけれど、この辺りは多少ドロドロしている箇所がある。雰囲気のある森の中を駆け抜けると、現れたのは袴岳への登り。[この先4回登って袴岳山頂! 辛さも楽しみに変えて頑張れ!]。要所要所には石川弘樹のコメントが書かれた看板が立つ。辛さを楽しみに変えるフィルターを兼ね備えているか自問自答し、前に進む。「さっきの(3A前の)ゲレンデの下りの疲れが溜まってるみたい」。そう言ったゆみちゃんからは笑顔がだんだん減ってきている。4つ目、最後の登りに入る頃にはとても辛そうな表情。「ゆみちゃん、こんな坂たいしたことないね!?」。思い込ませ作戦に出てみる。「これくらいの坂、I子さんだったら屁こいてるよ!?」。かつて、「屁でもない」。というところを、「屁が出ちゃうと」。言い放った愉快なランニング仲間がいるので引用してみた(笑)。「4Aにはシャインマスカットと笹寿司があるよ♪」。物でも釣ってみる。

ペースはゆみちゃんに合せてしまっても遅れてしまうのでダメだし、あまり離れてしまっても気持ちが折れてしまうので、姿が見えなくならない様に一定の距離を保つ。大丈夫かな? 時々振り返ってみる。目を合わせると頷くゆみちゃん。表情はすでに消えている。距離は30kmを越えた。そんな折、ハプニングが起こった。「みほさん…… 気持ち悪い」。え!??「ジェルが合わなかったみたいで、飲んだ途端に気持ち悪くなってきた。走るのちょっとキビシイ……」。なんと!? だから不慣れな物は口にするなと言ったのに。しかし、そんなこと言っても飲んじまったものは致し方ない。「大丈夫? もう少し行ったらエイドだから。そこまで行っちゃおうか」。エイドを目指して前に向き直って歩き出そうとしたところ、後ろから「大丈夫ですか?」。という女性の声。振り返ると、道端にしゃがみ込み、草むらに顔を突っ込んでいるゆみちゃんがぁ……。慌てて戻って背中をさする。おえおえ言ってはいるけれど、もどしてはいないみたい。「(胃から)下に落ちちゃえば楽になるんだろうけどねぇ」。何度か草むらに顔を突っ込みながらも、なんとかエイドに辿り着いた。

12:40pm。4A(33.8km地点)到着。
わぁ! シャインマスカットだぁ♪ お待ちかねのフルーツに手を伸ばした。すると、スタッフの方が慌てた様子で「水は!?補充する!?」。私のソフトフラスクを取って、水を満たしてくれた。そう、タイムスケジュールはもはや1時間40分押している。「コレ持って! 早く行って‼︎」。そう言って、シャインマスカットいっぱいの紙コップを2つ持たせてくれた。エイドのテーブルに手をついてしゃがみ込んでいるゆみちゃんの肩に手をやり「行こう」。声を掛けた。
後日、ゆみちゃんが言っていた「みほさんがいなければ、4Aで止めてた」。そうか……。ゴールすることしか考えていなかったけれど、リタイアするって手もあったのか。微塵も思いつかなかった。私のせいで、辛い思いをさせてしまったか……(゚ω゚)

紙コップ2つ両手に持ち、エイドを出た。シャインマスカットを一粒だけ食べたゆみちゃん「全部は食べられない……」。揺れて潰れそうだったのと邪魔だったのでガシガシ進みながら全部平らげた。3.6km先が第2関門だ。「みほさん、時間は? 間に合う⁇」。諦めなければ間に合うよ! 行こう。前に前に。同じペースで走っていた女性ランナーに、ゆみちゃんが声を掛けている。「お姉さん、絶対に関門まで行こうね!」。
いたたたた! 右膝ばかりか左膝まで痛くなってしまい、もはや下りに入ると拷問のよう。「みほさん、膝痛そう」。「ゆみちゃん、先に行く? ちょっと私、膝がダメだ」。「……行かない」。なんだとぉ。ならば痛みに痺れる膝を引きづって急げるだけ急ぐか。そして、しばらく行ったところで誘導のスタッフが立っていた。「関門はすぐそこですよ!」。「関門、何処なの⁉︎」。「ゆみちゃん、あと20mだよ‼︎」。

1:20pm。第2関門(37.4km地点)希望湖に到着。
関門時間10分前。ギリギリ。応援、スタッフ、たくさんの人が拍手で出迎えてくれた。号泣しながら通過するゆみちゃん。「もう間に合わないと思ったぁぁ(TдT)わーん」。「ゴールしたみたい………(^^;)」。みんな拍手しながら笑ってる。「頑張ったね! 諦めなければ大丈夫‼︎ あとはゴール目指すだけだね。最後の山だよ」。間髪入れずに毛無山へ。

「頑張れ、ゆみちゃん‼︎」。パントマイムのように、ゆみちゃんにくくり付けた見えない紐を引っ張りながら先へと進む。「ファイト!」。声援を送る以外、何もしてあげられない。お願いだから付いて来て。粘ってー。心の中で強く願う。けれど、ペースは上がらない。なんとか頂上へ。スタッフが立っている。私の後から来たゆみちゃんの顔を見て「怒ってる(笑)」。その言葉に「切れてないっすよ(-.-)」。と返すゆみちゃん。おや、まだ大丈夫そうなのか?「みほさん、シャインマスカットある? お腹減ってきちゃった」。「え⁉︎ ごめん、全部食べちゃったよ⁉︎」。「ぶぅ(ㆀ˘・з・˘)」。あ、「Finisher pacer」だ。ぴゅーっといなくなった。ペース配分おかしくない? おじさんを見掛けたのは、この時が最後だった。

せっかくの下りも、こう両膝が痛くちゃ楽しめない。振り返り振り返り様子を確認。半分歩いてるように見える。気持ちが焦る。「ゆみちゃん! 次のエイドには早めに着いた方が良い……」。そりゃそうだ。どうでも良いことを言ってしまった。ホントは「最悪14:30までには5Aに着かないと、残り7kmをすごいペースで走らないと間に合わなくなるよ」。って言いたかった。でも、具体的なこと言って焦らせてもいけないし、かと言って今の状況が分からないようなら知らせなきゃいけないし……悩ましい。

14:30pm。5A(43.0km地点)到着。
スタッフに慌てた様子は見られない。うん、なるほどね。リンゴいくつか食べて、この最後のエイドを出る。ゴールまで7km。諦めない。「ゆみちゃん、ゴールしたければ、この先もう歩けないよ」。「えぇ? 意味分からなぁい」。走り出す。軽口も叩ければ、脚もまだ残っているみたい。ペースを上げる。姿が見えなくなる。「ゆみちゃーん、ファイトー!」。「はーい」。ふて腐れてる? ニュアンスを含みながらも、大きな声で返事が返ってくる。ゴールすること、させることだけ考えて走る。先にゴールした仲間たちと連絡を取り合う。時間的にきびしい状況であることを伝えると「結果はどうあれ後悔ないよう、全力で」。

残り5kmの看板。時間は15:00。まだ登りもあることを私は知っている。追い付いて来るのをしばし待ち「ゆみちゃーん‼︎ 残り5km!! 死ぬ気で走ってぇーー‼︎‼︎」。置いて行かないで、と言われている以上、何が全力で、何をしないのが後悔になるのか考えた。死ぬ気で走って、と叫んで自分も全力で走った。ゴールを目指して。ゆみちゃんを振り切ってしまった。

15:20pm。ゴールまであと2.5km。斑尾高原ホテルに出る。先にゴールした仲間たちが待っていてくれた。ゆみちゃんの旦那さまも。「ごめん、置いてきちゃった」。そこで一緒にゆみちゃんを待った。ゴール付近でアナウンスしているマイクの声が聞こえてくる。近くにいた誘導のスタッフが「良いんですか? あと7分ありますよ?」。良いんです。

15:30pm。タイムオーバー。何とも言えない気持ち。ゆみちゃんの姿が見えた。「このお姉さんが引っ張ってくれたのぉ(TдT)」。泣いている。同じペースで走っていた女性ランナーに連れて来てもらったと。肝心なところで振り切っちゃってごめんね。最後、一緒にゴールしよう。

【ゆみちゃんコメント】
「みほさん、本当一緒に走ってくれてありがとうございました。制限時間時間内にゴール出来なくて、みほさんは出来た筈なのに、ごめんね。石川弘樹氏がコース説明の時に、辛くなったら自分の練習が足りないのを恨め的な事を言っていたけど、本当その言葉がグッサリ刺さってます。みほさんいなかったら4Aで辞めてた。斑尾高原ホテルのあの坂で、私は涙が止まりませんでした。2年前の思い出と重なって、まさか自分が走ってあの場所に居ると思わなかった。みほさんが待ってるとは思ってなかった。2年前とは逆になったね。最後の山を出て、黄色いおじさんに泣きながら「ゴールさせてくださぁい!!」。って言ったの。「大丈夫、2分前だからまだゴールくぐれるから!!」。って言ってくれた。黄色いシュッとしたおじさん。意識朦朧で…… 必死に泣きながら言ったの。今思えば、そのおじさん、石川弘樹だったw」。

■ 斑尾高原トレイルランニングレース2017 (長野県)

Report/Miho KANAYA
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