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逆境を吹き飛ばせ!〜TOGA天空トレイルの歩み -前編-

国内でも有数の観光地・飛騨高山や世界遺産白川郷を有する白川村のことを知っている人は多いだろう。では、それらと隣接する利賀村は?
シリーズ「トレイルランニングと地域活性」、今回は富山県南砺市利賀村で開催されている『TOGA天空トレイルラン』。
2017年2月現在、人口558人、高齢化率約40%、村内の森林率は97%を超え、富山県の最南端に位置し、限界集落を抱える過疎の村である富山県南砺市利賀村は、平成16年11月に4町4村が合併して南砺市となり市の一部となったにもかかわらず「村」の呼称を残すほど、愛着が強い。そんな利賀村で今、トレイルランニングが熱い。

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・過疎の村を襲った地滑り土砂災害
・スポーツ庁長官賞第一号
・トレイルランニングとの出会い
・繰り返した視察、苦労したコース作り
・数字で表れない人気レースの必須要件
・地滑り土砂災害の副産物と地域活性のゴール
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過疎の村を襲った地滑り土砂災害
今年(2017年)1月、全部門においてゴール前の最後を駆け下りるコースでもある旧スキー場の斜面が、2度も地滑りを起こした。幅100m×長さ250mの地滑りにより、10世帯余りが避難を余儀なくされるなど土砂災害を引き起こした。
これにより2月10日~12日まで開催する予定であった北陸最大級の冬のイベント「南砺利賀そば祭り」(来場者2万人)が、道路状況並びに来場者の安全を考慮した結果、中止を決定(イベント中止に伴う損失額数千万円)。これでTOGA天空トレイルランも中止か…となれば地域の気持ちがさらに沈んでいくことを危惧した大会実行委員会は、選手・スタッフ等の安全確保を第一にコース変更の検討にあたるなど“開催の方向”とのコメントを早々に発表する。
これほどまでにこの小さな村にとってトレイルランニングの存在は小さくない。スポーツツーリズムで初の「スポーツ庁長官賞」を受賞した流れを紐解きながらその理由を探った。

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スポーツ庁長官賞第一号
富山県の最南端に位置する利賀村は、南北に細長く標高1,000mを越える山々に囲まれ、非常に急峻な峡谷地形であり、村外へのアクセスが峡谷を抜けるために困難であるばかりか、同じ村内でもアクセスが良くない。人口減少は右肩下がりを続け、富山県内で唯一アクセスが困難な自治体と呼ばれる。
ため息しか出ないほど“恵まれた条件”は何もない利賀村が過去3回開催してきている「TOGA天空トレイルラン」は、昨年6月、スポーツツーリズムで初の「スポーツ庁長官賞」を受賞した。
これは、スポーツを通じて健康づくりをし、ツーリズムや産業振興、地域振興(まちづくり)に大きく貢献した団体を顕彰することを目的としており、新設された「スポーツ庁長官賞」の映えある第一号となった。村の人口を超える600名(今年は900名を予定)もの参加者が集まる同大会の高い評価は、どのようにして生まれ、なぜ多くの人の心に届くのか?

トレイルランニングとの出会い
民間企業の利賀リゾート開発が運営を行っていたスノーバレー利賀スキー場が、経営不振のため2000年12月に利賀村に売却。2013年3月24日の営業を最後に北陸屈指の雪質を誇ったスキー場は南砺市の行政改革により廃止され、新しい地域振興策を考えることとなる。
「最初は“トレイルランニング”という言葉すら知りませんでした」そう話すのは大会実行委員長の野原宏史さん。およそ1年の議論を重ね、南砺市に答申した内容が「地域活性化の一つとしてトレイルランニングの大会を開催する」だった。
「ある方が、この山を活かしてトレイルランでもやればいいのに!と言うんです。何ですか、それ? と言う状態で、山を走る? 誰が? 大会? 誰か来るの? ホントこんな状態でした(笑)。でも、森林率が97%でしょ、だから山を使って何かできないかなという気持ちはあったので、思い切って決断したんです」(野原さん)

繰り返した視察、苦労したコース作り
2014年6月に第一回大会が開催されるが、2013年は他の大会への視察を繰り返す。
「最初に足を運んだのは9月に開催されている長野県の白馬村の大会です。スターターに上村愛子さんとか登場して、とても華やかだったんです。これは村じゃ無理だって思ったのを覚えています。オリンピック選手なんていませんから(笑)。次は11月に行われている群馬県神流町の大会に行きました。神流には親近感を覚えましたね。同じ過疎の町だし、高齢化率も森林率もよく似ていて、その取り組みはとても参考になりました。特に印象に残っているのは、大会名物と言われていた『持倉エイド』でした。最年少が70歳台で、平均年齢が80歳を超える12人の集落がもてなすエイドです。神流で出来るならウチの村でも出来るはずだって勇気をもらえましたね」(野原さん)
森林率が97%とはいえ、だからといってトレイルが無数にある訳ではない。どうやってコースを作っていったのだろうか?
「地図を引っ張り出して、村の森林組合や高齢者に聞き取りしました。舗装される前に集落と集落を繋いでいた山越えの道の存在を聞き出しては、実地調査に入り、地図にマーカーする。その繰り返しでしたね。なんども藪漕ぎをして、村民総出で草刈りをし、古道や廃道を復活させたわけですけど、苦労しました(笑)」(野原さん)
高齢化率40%の村にとってそれは相当な重労働であり、かなりの時間を要したことは想像に難くない。道路を交通規制して行うマラソン大会と山域をフィールドとするトレイル大会とでは、その準備も大会そのものの運営も大きく違う。大会を通じて村に何をもたらしたのだろうか?

(文/山田洋)

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