キリアン・ジョルネと 「NNormal」が届けるメッセージ

山岳スポーツのスーパースター

世界で最も優れた山岳アスリートと言えば、スペインのキリアン・ジョルネ(Kilian Jornet)であるという意見に異議を唱える人はおそらくいないでしょう。

スペイン北東部のカタルーニャ地方、ピレネー山脈の標高2000mのスキーリゾート、レス・デ・セルダーニャで1987年に生まれたキリアンは、幼い頃から山で遊んでいたため、トレイルランニングや登山を始めるのは必然でした。
「他の子どもとは少し違っていた」
と本人が語る通り、山に登ること、山を走ることに夢中になっていました。

10代の頃、山岳レースのやり方を学ぶと、数々のスカイレース、ウルトラトレイルレースで優勝を重ねていきます。スカイランナーワールドシリーズでは6度もチャンピオンとなった他、2008年には、UTMB(Ultra-Trail du Mont-Blanc)で優勝し、世界中のランナーから注目を集めました。

その後もウェスタンステイツ、ハードロック、レユニオン…… など、世界のメジャーなレースはほとんどと言っていいほど勝利を挙げています。UTMBでは通算4回優勝し、最多優勝記録となっています。

 

 

キリアンは、その圧倒的な強さから「山岳王」と呼ばれるようになり、ウルトラトレイルランニングという競技を、より多くの人々に広めるきっかけとなりました。彼の活躍は、トレイルランニングの可能性を広げ、新たな世代のランナーを育む原動力となっています。

しかも、キリアンのステージはトレイルランニングだけではありません。SKIMO(スキーマウンテニアリング=山岳スキー競技)では、ISMF(国際山岳スキー連盟)世界選手権で7勝、ISMFワールドカップでは28勝を挙げているのです。トレイルランナーがスキーをするのは珍しいことではありませんが、夏も冬も世界のトップという選手は他にいません。

2012年、「Athletics Weekly」誌は、キリアンはウサイン・ボルトやモハメド・ファラーよりも印象的な「ワールドベストランナー」であると評しました。

さらに、アルピニストとしては「Summits of My Life」というプロジェクトでキリマンジャロ、モンブラン、マッターホルン、デナリ、アコンカグアなどを驚異的なスピードで登頂。そして、プロジェクトの締めくくりにチャレンジしたのは2017年のエベレストです。単独で酸素マスクも固定ロープも無線も持たずに26時間で登頂。そしてその5日後、今度はわずか17時間で再び登頂を果たしました。

 

 

キリアンの行動は一般のスーパースターとは少し違います。自分を高く見せるパフォーマンスや、人が集まるパーティーも好きではありません。自宅の棚にトロフィーも並んでいません。彼はただ、山にいたい、自然の中で生きていたいのです。

 

山岳エリアの環境保全を目指す
キリアン・ジョルネ財団を発足

 

エベレストへの挑戦の過程で、キリアンは葛藤していました。スタジアムに見立てられた山で、与えられたレギュレーションに沿って競う大会で勝利すること。そして、純粋に山という自然の中に溶け込んで生きる自分。そのどちらも自分であるということに。

そして、2018年に山岳環境の保護を目的とする 非営利団体「キリアン・ジョルネ財団」を設立しました。これは一つの答えだったのかもしれません。

財団の目的は、
・地球の生物多様性の保全と保護に貢献。
・気候変動を遅らせ、逆転させるために、環境保護とCO2排出量の削減を促進。
・自然地域、特に山岳地帯の汚染を軽減し防止。
・天然資源と生態系のバランスの取れた持続可能な利用についての意識を高める。
・より持続可能な山岳および自然地域モデルの開発を促進。
・気候変動と山岳環境における生態系の破壊についての国民の理解を深めるために、研究と知識の共有を促進。

山を守るための直接的な行動としては、「汚染された地域での清掃活動」「使われていない人工インフラの撤去」「人的影響を最小限に抑えるための持続可能なソリューションの構築」「個人、企業、団体の持続可能な移行を支援」「持続可能な屋外活動に関する既存のガイドラインを開発」「山岳地の生物多様性に対するマイナスの脅威を軽減」「道、標識、未舗装の道路、小屋などを維持管理」などを行っています。

山にレジャーで山に入る我々ができることに関して次のように提案しています。
・痕跡を残さない。ゴミはすべて持ち帰り、見つけたものはリサイクルする。
・山へ行くときは低炭素の交通手段を利用。
・自然を尊重し、静かにして、動物に近づいたり、植物を持ち去ったりしない。
・地面の質や訪問者の頻度によっては、道を離れたり、特定のエリアに入ったりすべきでない。
・山々の保全、登山道の修復、植林、自然景観の復元などのボランティア活動に参加する。

 

■KILIAN JORNET FOUNDATION(キリアン・ジョルネ財団)
https://www.kilianjornetfoundation.org/

 

 

シューズは簡単に買い替えないで
長く使い続けてほしい

キリアンは子供の頃からギアに夢中でした。自分にとって完璧なランニングシューズとはどんなものかを想像し、ノートに描くのに多くの時間を費やしていました。2022年、その夢が現実となりました。「NNormal(ノーマル)」の誕生です。

キリアンが共同出資のパートナーとして選んだのは、CAMPER(カンペール)。1975年にスペイン、マヨルカ島で創業したコンテンポラリー・シューズーブランドで、靴作りの豊かな伝統と他に類をみないブランドとして世界中で支持されています。CAMPERの靴はマヨルカ島のインカにある本社でデザインと開発を行い、毎シーズン500モデルを生み出し、世界の40ヵ国以上で400店以上ショップを展開しています。ちなみにランニングシューズは作っていません。

 

 

「CAMPERチームと会い、話し始め、同じ哲学とビジョンを共有していることに気づき、私たちは正しいパートナーだと思いました。私たちは、環境やアウトドア活動に関して新しい考え方や行動方法が必要であることに同意し、これらの価値観を共有できたことが、一緒に働き始める最も重要な理由でした。スポーツ用品に関して重要なのは快適性とパフォーマンス性です。しかし、それとは別に最も重要なことは、可能な限り少ない材料で、なるべく耐久性がある商品だということです」(キリアン・ジョルネ)

キリアン・ジョルネが開発に携わっているなら、商品のパフォーマンスには疑いの余地はありません。事実、2022年の「UTMB® Mont-Blanc」「Hardrock100」「Zegama-Aizkorri」でのレースでは、キリアンがNNormalの「KJERAG(ジェーラグ)」というシューズを履いて勝利を飾りました。

 

© Nick Danielson during UTMB 2022.
© Nick Danielson during UTMB 2022.

 

しかし、NNormalがある意味、パフォーマンス性以上に強く訴えているのが環境負荷を軽減させることです。その中でも、とくに注目すべきは、長いプロダクトサイクル、高い耐久性、リペアなど。

NNormalは長持ちする高品質な製品を開発することで製品の耐久性を高めると同時に、過剰消費を防ぐため、時代に左右されないデザイン、ユニセックスな色使い、小さなコレクションを保つための製品の多機能性に取り組みます。

また、毎年春と秋の季節ごとにコレクションを発表するのではなく、デザインや構造など、時代を超えた製品を作ります。そして、より持続可能な素材やより機能的なソリューションが見つかり、変更によって製品がより良くなる場合にのみアップデートを実施するとしています。

循環型社会を実現するためには、それを可能にするための設備と知識をユーザーに提供することも重要です。

 

 

設備については、ソールの張替えプログラムを実施、(日本でも実施予定)。Vibramのラバーソールを張り替えて製品の寿命を延ばします。

 

知識については、Team NNormalのエミリー・フォースバーグ(Emelie Forsberg)がこんなことを共有しています。

「私にとって、ランニング ギアの手入れは定期的に行う重要なことです。そうすることで、ギアを可能な限り最良の状態で長く保つことができ、走るときにありがたみを感じます」

 

 

■バックパック
・バックルはすべて閉める。
・ゴム紐がある場合は、緩んでいないことを確認する。
・特に暑い季節は、塩分が素材を劣化させるので、手洗いで汗を落とす。
・水筒、フラスク、ブラッダーの洗浄方法
小さじ1杯の漂白剤と重曹をボトルに入れ、水を入れて一晩放置する。
ボトルを食器洗浄機にかけるか、十分にすすぎ、完全に自然乾燥させる。

■フットウェア
洗濯機で洗うことはお勧めしない。手早く洗えるかもしれないが、高温にさらされシューズの構造やアッパーに影響を与える恐れがある。シューズをきれいにするには手洗いが一番。手洗いの手順は以下の通り。
・シューズがひどく汚れた場合は、まず泥が乾かないうちに温水、冷水、ぬるま湯で洗い流し汚れを落とす。泥は乾くと落ちにくくなり、靴の生地を傷めてしまうことがあるので、走り終わったらできるだけ早く泥を落した方が良い。
・タワシや硬いブラシの使用は避け、ジェット水流で圧力をかけたり、柔らかいブラシやマジックスポンジで直接洗う。
・ゴムの部分が歪むことがあるので、あまり熱にさらさない方が良い。
・靴の中敷きは別に洗い、靴の中まで清潔に保つこと。
・靴は風通しの良い室温の部屋で、直接熱の当たらない場所で乾かす。
・靴にこびりついた汚れは、靴が完全に乾くのを待ってから、クリーニングブラシで汚れや泥を払い落とす。

■アパレル
・柔軟剤の使用は避け、中性洗剤を使用。
・30℃以下の水で洗う。衣類は浸け置きしない。
・乾燥機に入れず、逆さまにして陰干しする。
・アイロンは絶対にかけない。
・メンブレインウェアはテキスタイルガイドラインに従って取り扱う。

キリアンは「KJERAG」のプロトタイプで1,300kmを走りました。「商品を長持ちさせて、買い替えを減らしましょう」とここまで強いメッセージを出す企業がどのくらいあるでしょうか? NNormalのメッセージでトレイルランナーの心はどれだけ動くのでしょうか? 今後も注目していきたいブランドです。

 

モバイルバージョンを終了