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【Tips】毛虫に触れていないのに湿疹が? 山で注意すべき「毒毛虫」の落とし穴

春から秋にかけてのトレイルでは、自然の美しさとともに、思わぬ落とし穴が潜んでいます。そのひとつが、毛虫による皮膚トラブル。しかも最近増えているのは、毛虫に直接触れていないのに湿疹やかゆみが起こるケースです。

 


■ 空中に舞う毒毛が肌トラブルの原因に

代表的なのが「チャドクガ」や「イラガ」などの毒毛虫。これらの毛虫は、体表に数十万本もの微細な毒針毛(どくしんもう)を持ち、それが風に乗って飛散します。

毛虫に触れていなくても、
・木のそばで立ち止まった
・洋服に付いた毛にあとから触れた
・繭や抜け殻に接触した
・洗濯前のウェアを再着用した
といった場面で、毒毛が肌に刺さり、かゆみ・湿疹・炎症を引き起こすことがあります。

 


■ 特に注意が必要な時期と場所

毛虫の発生は4月〜10月ごろ。特に以下の時期・環境は注意が必要です。

・初夏から秋の低山地帯
・ツバキ、サザンカ、ミズナラ、カエデなどの葉が生い茂る場所
・風が吹き抜ける尾根や稜線上の木陰
・人が立ち止まりやすい休憩スポットや登山道脇のベンチ周辺

 


■ 毒毛虫の種類と特徴

 

【チャドクガ(茶毒蛾)の幼虫】

・全長1.5〜2cmほど。淡黄〜茶色の体色。
・ツバキ・サザンカの葉裏に集団で発生。
・0.1mm以下の毒針毛が風に乗って飛散し、直接触れなくても皮膚炎を引き起こす。
・発生時期:5〜6月、9〜10月
・生息場所:低山のツバキ科植物周辺

 

【マイマイガ(舞舞蛾)の幼虫】

・全長4〜6cm。黒っぽく長い体毛を持つ。
・木の幹や葉に1匹ずつ見られる。
・毒針毛はないが、アレルギー反応を起こすこともある。
・発生時期:5〜8月 ・生息場所:ミズナラ、サクラ、カエデなど

 

【イラガ(電気虫)の幼虫】

・小さく丸い体で、黄緑〜茶色の鮮やかな色。
・背に多数のトゲがあり、触れると刺すような激痛を感じる。
・発生時期:7〜10月
・生息場所:広葉樹の葉上、低木の葉裏

 


■ 症状と対処法

毒毛に触れることで以下のような症状が現れます:

・肌にチクチク・ピリピリした痛み
・赤く広がる湿疹、ぶつぶつ
・数時間後に強いかゆみ

【対処法】
1.粘着テープでやさしく毒毛を除去(絶対にこすらない)
2.石けんと流水で洗い流す
3.冷やして炎症を抑える
4.市販薬を活用する
・ステロイド外用薬(ベトネベートN軟膏AS、フルコートf、ムヒアルファEX)
・使用法:1日1〜数回、かゆみや赤みに薄く塗布。広範囲にはジェル・ローションが便利。
・抗ヒスタミン内服薬(アレグラFX、アレジオン20、クラリチンEX、タリオンAR)
・使用法:症状が強いときに1日1〜2回服用。眠気の有無を確認。
5.症状が強い・広がるときは皮膚科へ

 


■ トレイル中の予防策

・長袖、長ズボンで肌の露出を防ぐ
・木の枝や葉に近づかない/触れない
・木陰にザックや帽子を置かない
・立ち止まって休むときは広い場所を選ぶ
・帰宅後、衣類やタオルを屋外で払い、単独で洗濯する

 


 

毒毛虫は小さくても侮れない“空中の刺客”。直接触れなくても被害が出ることを理解しておくことで、夏山をより安全に、快適に楽しむことができます。知識と備えでトラブルを未然に防ぎましょう。

 

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