一点突破的なコンセプトモデルは
まさに未来のダウンヒルマシン!
厚底ランニングシューズの生みの親である、HOKA ONE ONEが驚きのシューズを発表しました。その名は「TenNine(テンナイン)」。見ての通りソールのヒール部分が大きく後にはみ出しています。果たしてこれは何を意味しているのでしょうか?
HOKA ONE ONEの説明によると、ランニングよって受ける体への衝撃やストレスを調査し、同じ接地時間で受ける負荷の掛かり方を変える方法を発見。その結果、生まれた「TenNine」は、安定した滑らかな走り心地で、長距離のさまざまな地形を効率的に走れる全く新しいトレイルランニングギアだということです。
それではアッパーから見ていきましょう。
シングルレイヤーのメッシュ素材は薄くてしっかりしています。あまり伸縮はせず、しっかりとホールドするタイプ。そして、大きな特徴はタンにあります。いや、タンというよりはインナーといったほうがいいかもしれません。フォアフットからミッドフットまでを足を包み込んでいるからです。つま先のセンター部分はアッパー素材もなく、このインナーがむき出しになっています。
ヒールを見ると、尖った履き口が先進的な印象を与えていますが、ソフトな素材を使用していて、ヒールカウンターも内蔵していません。その替わりに踵下部まで張り出したミッドソールがサポートしています。
ソールで気になるのは、踵よりはるか後ろまで張り出たミッドソールです。もちろん長さだけではなく、幅も高さもあり、HOKA ONE ONEのトレイルシューズの中で最もボリュームがある「STINSON ATR 5(スティンソン ATR5)」と比べても、長さ約6cm、幅は約2.5cm程オーバーサイズとなっています。
しかし、足下部分のスペックはフォアフット29mm、ヒール33mm、オフセット(ドロップ)4mmと「STINSON ATR 5」よりも低いのは意外でした。
足を入れて立った状態では、通常のシューズとの違いは感じられません。アッパーのしっかりしたメッシュ素材の下層にインナーがあるおかげで、足あたりはソフトです。
フォアフットからミッドフットで平地や登りを走った印象は、いたって普通の厚底シューズです。ヒールから張り出したミッドソールが引っかかることもなく、しばらくすると、そのことすら忘れてしまうほど自然な印象でした。
ところが、下りで荷重をヒール寄りに変えると一気に特徴が際立ってきます。例えば通常のシューズの場合、着地した時のクッションは、当然踵の下の部分に感じるわけですが、「TenNine」の場合は、踵とその周囲にもフワフワの落ち葉が敷き詰められているようなイメージです。ユニークな形状から想像すると強引な力がかかりそうな不安がありましたが、結果としてはよりスムーズなライド感となっています。
さらに下りの斜度がきつくなり、ヒールに頼る割合が増すと、まるで補助輪がついた自転車のような安定感を発揮します。試しに大股で踵を下に投げ出すように走ってみると、他のシューズでは味わうことができないマイルドで安定した走りを体感できました。あえてヒールカウンターを省いて足首の後ろへの動きを自由にした設定は、この走りを想定していたのかと納得しました。
得意なシチュエーションはスキー場や林道の下り。誰もが想像する通り、階段やある程度段差のある岩場などは不向きです。メーカーも階段での使用は奨励していません。
使用できるシチュエーションが限定的とはいえ、トレイルランニング界に新しい風を送りこんだ「TenNine」。ダウンヒルを快適にする目的で生まれたHOKA ONE ONEが目指すところはブレていません。これからの動向が気になります。
TenNine(テンナイン)
・価格:¥30,000+税
・ソールシステム:オフセット:4mm、ヒール:33mm、フォアフット:29mm
・重さ:360g(27.0cm)
・サイズ:25.0、26.0、27.0、28.0cm
・カラー:1色
・テクノロジー:Midsole Volume / Meta Rocker Geometry / Active Footframe
■HOKA ONE ONE https://www.hoka.com/jp/