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【技術連載】ゼロベースランニング #1たどりついたのはナチュラルランニング
2016年11月28日

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#1 たどり着いたのはナチュラルランニング

僕のフルマラソンの自己ベストは2時間45分39秒です。しかも裸足で。しかし、中学3年の後半から大学までは、いわゆる陸上中長距離のメインストリームの中にいましたし、もちろん、シューズも履いていました。その僕がシューズを脱いで走り始めたのは、2010年の9月。それにはもちろん、大きな理由がありました。

中学の時は、記念すべき第1回全国中学校駅伝大会の1区を区間3位で走り、福岡の名門・大牟田高校に進学。しかし、ほとんど故障ばかりでした。ここで一度大きく挫折します。
劣等感が充満した高校生活を送ったあと、一浪し(ここも挫折といえば挫折)、箱根駅伝を走るために帝京大学に入学。関東インカレの1500mでは3回入賞したものの、最終学年でメンバー入りできそうだった箱根駅伝では、直前の練習でふくらはぎの肉離れを起こし、箱根路を走ることはかないませんでした。
山あり谷ありのランニング人生でした。今思い起こしても、この「谷」の部分の経験は、すごくつらい思い出ではあります。ただ、この負の経験は僕に大きなきっかけをくれました。この負の経験は、僕に治療家としての道を与えてくれたのです。

さて、選手としての立場ではなく、鍼灸マッサージ師として箱根駅伝を目指す学生と向き合うようになってからも、様々な「谷」が試練を与えてくれました。その中でも特に忘れられないのは、エースだった学生が直前の故障で箱根駅伝に出場できなかったことです。ext
僕がそうだったように、彼にとっても箱根駅伝は最大の目標。しかもエースである彼は、チームの中でも大きな役割を担っていましたし、調子も上向きで、本番を心待ちにしていました。
そんな中、最終合宿中の練習で故障してしまったのです。12月10日のチームエントリー日(補欠を含めた16人のメンバーを登録する日)の前日だったと記憶しています。その時はまだ、本番まで3週間残っていたので回復するだろうと見込んでいましたが、なかなか治らない。ジョギングだけでもできれば、体力の低下を最小限に抑えられますが、それすらもできない毎日が続き、12月29日の区間エントリーを迎えます。しかし、とうとう彼は間に合いませんでした。
この日、選手のケアが終わり帰り支度をしていると、彼は治療室に申し訳なさそうに入ってきて「悔しいです」と、何度も繰り返しながら泣いていました。僕も、この学生のために何もしてあげられなかった不甲斐なさと、過去の自分の悔しさが重なり、一緒に泣いていました。
つらい思い出ですが、この出来事は僕に大きなきっかけを与えてくれました。ランニングによる故障は、ベッド上の治療だけではダメだと考えるようになったのです。
彼だけでなく、故障が治っても、またすぐ故障して治療に戻ってくるような学生もいたので、これはもう、根本的に走り方を見直さなければならない、走り方が変わるような「何か」に取り組まなければならない、そんなことをずっと考えながら現場で彼らと向き合うようになりました。

zerobase_ph1_2裸足ランニングとの出会い
そんなある日、知り合いから『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナー VS 人類最強の“走る民族”』(NHK出版)という本を教えてもらい、すぐに読み始めました。そして、シューズはケガを減らしてくれるどころか、増やしているという、ナイキのエピソードのあたりで、もういてもたってもいられず、裸足で走り始めたのです。
これだ! と思いました。故障を繰り返すランナーに必要なのは、裸足で走ることだ! と。
実は、僕が通っていた熊本の小学校は、校舎の中も校庭も、裸足で生活することができたのです。校舎の中で上履きを履く子はゼロ。校庭も裸足で走りまくっていて、下駄箱横の足洗い場でバシャバシャっと足を洗い、入口に備えつけてあるマットでザザっと足を拭いて教室に入る。そんな環境でした。
もちろん、運動会なんて、ずっと裸足。女子の中にはシューズを履いている生徒もいましたが、リレーの選手はみんな裸足。なぜなら、シューズを履くと遅くなるから。リレーで選手になるような生徒たちは、みんなそう信じていました。

そんな環境で育ったからか、裸足で走ることに特別な抵抗感はありませんでした。むしろ、シューズに守られていたのでは、自分の弱点が見えなくなるし、人間本来の走りなんてわかるはずがない、という思いの方が強かったです。
それからは、裸足で走ることに没頭しました。最初はジョギングで少しずつ慣らして。今でこそそんなことはなくなりましたが、陸上競技場のトラックをゆっくりジョギングするだけでも、最初は足の裏の皮がむけたりしていましたから、相当雑な走りだったのでしょう。
それから少しずつ、シューズを履いていた時と同じように、400mや1000mのインターバルを始めました。タイムも、たとえば400mだったら70秒とか、1000mだったら3分だったり。もっと筋肉痛が出るものだと思っていたので、意外に足へのダメージが小さかったのにはびっくりしました。
競技場でのインターバルは問題なくできるようになってきましたが、ロードになると、路面の凸凹に気を取られながら、少し窮屈に走っていました。
そして僕は、大きな課題に直面しました。職場の近くの道路をジョギング中のこと。その時は、ペースを上げるということもなく、ゆっくり走っていたのに、なぜか左のふくらはぎがすごく張ってきたのです。「おかしいなぁ」と思いつつ、そのまま走っいてたら、急に左ふくらはぎにピリッとした痛みが走りました。
懐かしくも忌々しい、あの、箱根駅伝の直前で起きた肉離れと同じ症状でした。その日は無理をせず、歩きながらトレーニングを終えました。そして次の日、ストレッチをしても痛くなかったので「何だ、昨日のは気のせいだったのかな?」と、また走り出したら、今度は前日よりも強い痛みが……。
無理をしてはダメだなと思い、1週間ほど休みました。だいぶ症状も改善したので、またゆっくりとしたペースのジョギングから始めたのです。もちろん裸足で。すると、何と今度は、反対の右ふくらはぎに同じ症状が出たのです。正直、信じられませんでした。
仕方がないので、また1週間程休んで、ストレッチをしても痛みが出なくなってから走り始めました。なんと、今度はまた左のふくらはぎに痛みが……。
もう、何が何だかわからなくなりました。何で?
本当は、裸足ってよくないのかな? そう思ったことは一度や二度ではありません。以降半年間、ふくらはぎの肉離れを左右3往復も繰り返してしまいました。

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ゼロベースランニングへのきっかけ
しかし、このことがあって僕は気づくことができました。裸足で走ることが、そのまま自動的にランナーの故障を改善するのではなく(もしかしたらそういう場合もあるのかもしれませんが)、裸足で走るメリットのひとつは、人間としてあるべき体の使い方ができているのかどうかを、身をもって知ることができるということ。
僕はこのサインを元に、できるだけふくらはぎから目を離し、考えないようにしました。それでもやっぱり、痛みが出る度に心は折れそうになります。でもその度に、ふくらはぎの肉離れは、ふくらはぎに問題があるから起きているのではないはず。この症状の根源は、ふくらはぎではないほかのどこかにあるはずだ、と信じてシューズを履かずに、トライを重ねました。
そして、僕の仮説は的中しました。ふくらはぎの肉離れループに、3往復目で終止符を打つことができたのです。最初は恐る恐るでしたが、3日走っても、2週間走っても痛みが出てこない。僕に足りなかったのは、これだったのだ! 飛び跳ねて喜びました。
それと同時に、僕がこのケガで気づいたある動きは、ふくらはぎだけでなく、ランニング傷害全般の解決策としても必須であると仮定し、治療の現場で応用すると、患部を触ることなく痛みが改善する症例がほとんどであることがわかりました。
このふくらはぎの肉離れから気づいたことは、胴体を使って走ること。
胴体の動きと四肢の動きの関係をリノベーションすることです。これができていなかったから、何度も何度も肉離れを繰り返すことになったのでしょう。
この動きを身につけてからは、ケガを改善するだけではなく、パフォーマンスアップという面でも大きな成果を上げることができました。

2010年9月から裸足で走り始め、紆余曲折ありながらも「胴体を使って走る」ということに気づき、トレーニングを積み重ねて出た2012年の東京マラソンは、2時間50分21秒。初めてのサブスリーは、「ビブラム・ファイブフィンガーズ」という五本指のシューズを履いてレースに出場しましたが、後半のペースダウンはほとんどなく、歓喜のゴールを迎えることができました!
そして、迎えた2012年の湘南国際マラソンにて、裸足で2時間45分39秒でゴールできたわけです。
シューズに頼っていた頃には考えられなかったタイムを出すことができたのは、ふくらはぎの肉離れ3往復という「大失敗」から学んだ胴体の使い方を身につけたから。ランニングにおけるケガの改善とパフォーマンスアップは、同一線上にあることを確信しました。
僕たち人間は、二足で立ち、歩き、走ることができます。これは僕たちにとって「自然」なことです。それと同じように、僕たちの体の機能にも「自然」があります。
たとえば、足には、シューズを履かずとも衝撃吸収する機能がそもそも備わっていることも「自然」です。本書の随所に出てくる「胴体」を使うことも、人間のランニングにおける「自然」です。その、僕たちにそもそも備わっている「自然」と、僕たちが住むこの地球の重力という「自然」を調和させること、これが本書であなたにお伝えしたい「ゼロベースランニング」です。

ナチュラルランニングという概念は、先に挙げた『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”』の爆発的ヒットで一気に日本に広がりましたが、残念ながら、ただ単に知識として広がっただけで、その真意が浸透したわけではありませんでした。なぜなら、多くの人が裸足や裸足感覚のシューズを履いて走ることで、人間の「自然」を取り戻そうとしましたが、現代を生きる僕たちの体と動きは、もう「自然」な状態には程遠く、多くの人が「自然」の厳しさに叩きのめされ、そして結局「自然」は体によくない、難しい、私には向かないと「自然」を否定し始めました。
しかし、僕たちの体の中に「自然」は、必ず残っています。40歳になると足の骨が半分に減るなんてことはないでしょう? 50歳になると背骨の数が減るということもありません。
ただ単に、あるべき姿を放ったらかしにしてたせいで、使い方がわからなくなっているだけなのです。
もうこれ以上、大切なレースに出ることなく悔し涙を流すランナーを見たくないですし、大切なレースを冴えない顔でゴールするランナーも見たくないのです。せっかく走るなら、気持ちよく、スピードに乗って、笑顔でゴールする。こうありたいですよね。

(『走りの常識を変える!フォームをリセットする! ゼロベースランニング』あとがきより)

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#1  たどり着いたのはナチュラルランニング
 #2   人間本来の走り方
 #3   走りをゼロから考え直す
#4   胴体の動きは四肢の動きに先行する
#5   「バネ」のメカニズムを発動せよ
#6   カカトを押しつける
#7   振り子のステップ
#8   腕は振るのではなく振られる
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走りの常識を変える!フォームをリセットする! ゼロベースランニング
発行元:実業之日本社
判型:四六判、192ページ
定価:本体1300円+税
ISBN: 978-4-408-45615-7
発売日: 2016年12月2日
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トレーニングの動画はこちら


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■著者 高岡尚司:1978年生まれ。福岡県大牟田高校から帝京大学へ進学。関東学生陸上競技対抗選手権大会 などで活躍。ケガを経験し選手の道をあきらめ、トレーナー、鍼灸・あん摩マッサージ指圧師として活動していく中で行き着いたのが「ゼロベースランニング」。裸足感覚のシューズをつくれないかという想いから足袋メーカー・きねや足袋と「MUTEKI」を共同開発。2014年からベアフット(裸足)感覚を追求した「ALTRA」シューズのアンバサダーに就任。現在は、自身が提唱する「ゼロベースランニング」の普及と、オリンピックで活躍するランナーを育てるプロジェクトに参画し、コーチとしても活動している。2012湘南国際マラソン 2時間45分39秒(裸足フルマラソン日本最高)。http://www.takaokashoji.com/


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