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100マイル初挑戦の「THE NORTH FACE FLIGHT TOKYO」スタッフに先輩100マイラーからのアドバイス

 

日本を代表するトレイルレース「ウルトラトレイルマウントフジ」の100マイルカテゴリー「FUJI」に初出場する佐藤奈津子さんはランニング専門店「THE NORTH FACE FLIGHT TOKYO」のスタッフ。装備、補給やメンタル面など不安があるとのことなので、100マイルレースを何度も完走している先輩、鵜野貴行さん(THE NORTH FACE Sphere)、村井絢子さん(ゴールドウイン)からのアドバイスをもらって、それをウェブサイトで共有しちゃおう、というのがこの企画。FUJIはもちろん、ロングレースに調整してみたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

ペース配分や補給など、初100マイルは未知の世界

 

佐藤 私は今まで80kmのレースが人生最長距離なんですけど、80kmでも辛かったし、あんなに眠かったし、あんなに寒かったし。その2倍以上あると考えると……。もちろん、FUJIを目指して頑張ってきたのですが、エントリーのボタンを押してからずっと憂鬱です。
村井 それだけ走ったらもう十分だよ。FUJIは時間が長いから寝たりもできるし(笑)
佐藤 未知すぎて……。寝ますか?
鵜野 仮眠所があるよ。
村井 私は必ず寝る。30分から1時間くらい仮眠を取ると体が復活する。それまでの経験では、レース翌日に寝て起きた時って身体がバキバキになってすごく痛くなることが多かったから、はじめてのUTMFの時は、寝ないつもりだったけど、サポーターの方から「30分寝たら調子よくなるよ」と聞いて、ちょっと寝てみたら意外とリカバリーできた。
鵜野 佐藤さんのゴールの想定時間はどのくらい?
佐藤 完走することが目標です。大体43時間くらいでゴールしたいと思っています。

 

佐藤奈津子(さとうなつこ) 1993年生まれ、埼玉県出身。ロードランニング歴は約7年。2019年にゴールドウインに入社、2022年にランニング専門店「THE NORTH FACE FLIGHT TOKYO」勤務に。100マイルを完走した先輩の勇姿をみて、FUJI参加を決意した。

 

村井 佐藤さんとは何回か一緒に走ったことがあるので、なんとなくわかるけど睡眠時間込みでも43時間でゴールできるペースでいけるんじゃないかな。
鵜野 FUJIはロードの区間が長いから、ロードで走れる佐藤さんは強いと思う。
村井 でも、ロードで足を使い切らずに淡々と進む感じがいいよね。ロードが得意な人は気持ちよいペースで走ってしまうかもしれないけど、ある程度自制する意識が必要かな。
佐藤 序盤はどのくらい余裕を持って走るのがいいですかね? 例えば、私は80kmの経験しかないので、その倍の距離となったときに、80kmのペースと比べての何%くらいで走ればいいですか?
鵜野 僕はたいして変わらないかな。でも、70%くらいの出力かな。
村井 私は、前半は80kmの50%くらいかもしれない。100マイルを走っちゃうと80kmとか70kmのほうが緊張するな。途中で不調になったら、リカバリーできるタイミングがなかなか無いなと思って。
佐藤 失敗してもリカバリーが効くから長い方が楽という考え方は1ミリもなかったです(笑)。
村井 気持ち悪くなったり、足が痛くなったり、そういうのもすべて込みで100マイル。何もトラブルがなく100マイル走り切る人なんてほぼいないと思う。
鵜野 波風立つのが100マイルという感じ。予想がつかないからね。
佐藤 かっこいい。お二人でも予想がつかないですか?
村井 つかない(笑)。

 

鵜野貴行(うのたかゆき) 1983年生まれ、静岡県出身。サイクルメッセンジャーを経て、2011年にゴールドウイン(THE NORTH FACE)に入社。入社後まもなく始めたトレイルランニングに熱中し、国内外のトレイルレースに挑戦している。現在はアスレチックのコンセプトショップ「THE NORTH FACE Sphere」に勤務。FUJIは過去3回完走。

 

鵜野 今、一番悩んでること、困っていること、聞きたいことは?
佐藤 補給をどうしようかと考え中です。ジェルはフルマラソンやウルトラマラソンでお腹がゆるくなる経験をしたので、極力おにぎりなどの固形物や、エイドにあるうどんとか焼きそばなどで、でうまく配分したいと思っています……。
鵜野 いけるといえば、いけるけど、その固形物だと摂取してからエネルギーになるまで2〜3時間かかるので、その分タイムラグを計算をしておかないと、欲しいときにエネルギーにならないことがあると思う。ベースは固形物でもいいと思うけど、大きな登りに入る時だけポイントでジェルを摂るのはありかな。お腹が弱いならマグネシウムが入っていないものだったり、わりと摂取しやすいANDO(飲めるスポーツ羊羹)みたいなものとか、自分が合うものを見つけられるいいと思う。
佐藤 なるほど、ジェルもちょっとは持って行ったほうがいいですね。

 

Equipment

シューズから着替えまで、装備選びはやはり経験がものを言う

 

鵜野 シューズは何を履く予定?
佐藤 THE NORTH FACEの「SUMMIT VECTIV™ PRO」を履く予定です。
鵜野 一足でいく?
佐藤 迷っています。後半からは「VECTIV™ ENDURIS Ⅲ」に履き替えた方がいいかな? 土井陵選手のお話を聞いてからずっと迷ってます。土井さんの場合はよりスピードの出るシューズに履き替えることも考えてらっしゃるみたいですけど、私は逆に後半のつらいときにカーボンプレートではないシューズに履き替えたほうがいいのかな?
鵜野 それは持って行っていいと思う。ドロップバッグに入れておいて、その時の体調とか足の疲労度とかで考えればいい。後半になればなるほど走力もペースも落ちるし、筋肉も疲れてくるので、わりとハイクッションなモデルを選ぶのがセオリーだよね。
佐藤 村井さんはシューズを変えますか?
村井 私は一応持っていくけど替えないときもある。
佐藤 ではドロップバッグに「VECTIV™ ENDURIS Ⅲ」を入れます。

(左)SUMMIT VECTIV™ PRO  🔗メンズ 🔗ウィメンズ
(右)VECTIV™ ENDURIS Ⅲ 🔗メンズ 🔗ウィメンズ

 

鵜野 バックパックは何を使う予定かな?
佐藤 「TR10」でいくか、「TR Rocket」で行くかまだ迷っています。
鵜野 ミニマライズできるなら小さい方がよりいいよね。以前、FUJIに出場した時はベスト型パックのラインナップが少なく、容量を選べなかったので、5Lに入る容量に物を切り詰めて走っていたな。

 

村井絢子(むらいあやこ) 1982年生まれ、北海道出身。2008年より株式会社ゴールドウインの社員として、THE NORTH FACEやC3fit、NEUTRALWORKS.の企画を経て、現在はダンスキンの企画を担当。2009年より山を走り始め、国内外のレースに多数参戦。FUJIは過去3回完走。2023年も出場予定。

 

村井 疲れた身体でエイドに入って荷物をガサゴソやるときに、パンパンに詰まっていると、装備の出し入れがしにくいから、その点では大きいパックのメリットがあると思う。ただ、「TR Rocket」に入る装備をパンパンに入れたとしたら、ちょっと重すぎる気がするなぁ。もちろん悪天候になったらそれなりに身を守る装備は必要になって荷物が増えるので、その時はパック容量も含めて考えるべきだと思うけど、それほど悪天候でなければ「TR10」に入る荷物を目安にする方がいいかな。あとは「TR10」のドローコードにシェルを挟んだりして活用するといいよ。私はロングレースは「TR10」でいくことが多い。下からもファスナーアクセスできるのが便利だから。
佐藤 大きいパックは、装備の入れすぎに注意ってことですね。
村井 佐藤さんは心配症な性格だからね(笑)。
佐藤 そうなんです。白馬国際で「TR10」を使ったのですが、前日に店長から「こんなに重たくして、何を入れたんだよ!」。あれも、これもいらない! と言われました(笑)。
鵜野 僕は10Lの「TR10」で大体のレースはいけますね。無精なので(笑)。荷物はいつもほぼ同じです。雨だろうが晴れだろうが。同じものを持っていって同じところに入れて、慣れているものを使う。僕は「HYPERAIR GTX Hoodie」と「VENTRIX Trail Hoodie」は普通の山行にも持っていく。パンパンの状態でチェーンアイゼンを入れなきゃいけなくなっても、ボトムのストレッチポケットとかドローコードを活用して入れています。
佐藤 なるほど、では「TR10」でいく想定で考えます。

 

(左)TR10 ・容量:S/8L、M/9L、L/10L 🔗ユニセックス
(右)TR Rocket ・容量:M/15L、L/16.5L 🔗ユニセックス

 

鵜野 その他の装備は決まったのかな?
佐藤 今、考えているのはこんな感じです。

 

BEFORE:相談前にチョイスした佐藤さんの装備。

① シューズ:SUMMIT VECTIV™ PRO 🔗メンズ 🔗ウィメンズ
② パックパック:TR10 🔗ユニセックス
③ カットソー:S/S Hypervent Crew 🔗メンズ 🔗ウィメンズ
④ インナー:100DRY Tank 🔗メンズ 🔗ウィメンズ
⑤ ウインドシェル:Infinity Trail Hoodie 🔗ユニセックス
⑥ ショーツ:Enduris Racing Short 🔗メンズ 🔗ウィメンズ
⑦ レイン上(必携):HYPERAIR GTX Hoodie 🔗ユニセックス
⑧ レイン下(必携):FL Trail Peak Pant 🔗ユニセックス
⑨ 保温着上(必携):VENTRIX Trail Hoodie 🔗ユニセックス
⑩ 保温着下(必携):VENTRIX Trail Pant 🔗ユニセックス
⑪ 保温着:Expedition Grid Fleece Hoodie 🔗ユニセックス
⑫ カットソー:Expedition Dry Dot Crew 🔗ユニセックス
⑬ ゲイター:Compression Calf Sleeves
⑭ アームカバー:Inspiration Arm Sleeves(C3fit) 🔗ユニセックス
⑮ ヘッドバンド:Dipsea Cover-it 🔗ユニセックス

すごく寒がりなので、暑いくらい持って行っちゃおうかなって。

鵜野 着ているカットソー以外にもロンTも持っていくの? 「TR10」に長袖を入れると結構な厚みになる。シェル2個分くらいかな。
村井 「TR10」には入らなそう。
佐藤 最近行った山での練習で寒かったから。もちろん4月というのはわかっているんですけど、雪が降った年もあったし、気温が読めないなと思って。ロードだったらずっと走り続けられるけど、山だと止まったり歩いたりするので、かなり身体が冷えてガタガタ震えた経験があったんです……。
鵜野 レインジャケットを防寒着の一つとして考えると長袖とソフトシェルは省いてもいいかも。ただ寒さに対する個人差があるから最終的には自分で判断しないとね。僕はものすごく汗かきなので、ハードシェルはあまり着ない。その分ウインドシェルは持っていく。
村井 私の初100マイルでは、ウインドシェルと長袖を省いていました。初めてのときは、まだそんなにペースが速くなかったからレインを兼用しても暑くなりすぎることがなかったですね。保温着として長袖を持つようになったのは汗をかけるくらいまでの運動強度で走れるようになってから。でもデポには必ず着替えを一式用意しておくと安心。サポートがつくなら着替えるチャンスは何回もあるから、常にキャリーしなくても大丈夫かな。
佐藤 そうですね。もう一度考えます。

 

AFTER:「Expedition Grid Fleece Hoodie」と「Expedition Dry Dot Crew」をドロップバッグに入れるか、サポートに預ける予定。

 

 

Mental

苦しさを楽しみに変えるポジティブマインド

 

佐藤 最後にメンタル面でのアドバイスをお願いします。
村井 私も佐藤さんと性格が似ていて、心配性で石橋を叩いて叩き割っちゃう性格なんだけど、100マイルを走るときはポジティブに行く。考え方1つで見える景色が全部変わるので。ポジティブなマインドでいくといい血流が筋肉にも回るから、絶対大丈夫って思うようにしている。たとえば、苦しい時に「これを乗り越えたら私、痩せてスレンダーになってる」とか、「これを乗り越えたらわけもなくいいことあるかも」みたいな気持ちでいるんだけど、それは鵜野さんが得意なはず。鵜野さんいつも楽しそうで、いつも笑っているから(笑)。
鵜野 楽しいんですよね(笑)。

 

 

村井 楽しい、楽しいっていうと、苦しくないのかな? と思うかもしれないけど、苦しくない100マイルなんて絶対なくて、それを楽しい気持ちに変換することができたらハマる気がする。ポジティブに考えるのが超長距離を走るときに一番大事だと私は思っている。普段はすごくネガティブなんだけど(笑)。
鵜野 脳を騙してね。僕はレースをショートタームに区切って考える。次のエイドに行けばサポーターが待っているとか、焼きそばがあるとか、うどんが食べたいなとか、そんなに遠くない未来のことをずっと考えながら、レースをパーツ毎に分けてクリアしていくイメージかな。
村井 それそうですよね。みんなそれ言うかも。私もそう。
鵜野 登りきったら「やったー」っていう達成感がある。それで、ここはやりきったから次だ! というふうに、目の前の課題を乗り越えたときに一つポジティブになる。その繰り返し。160kmは通しで考えると長いけど、エイド毎に考えるとだんだん気は楽になる。よく言われることだけどね。
佐藤 あと100kmも残っていると考えると絶対嫌になるなって、ネガティブでしかなかった。
鵜野 この積み重ねを繰り返していくと100kmくらい進んでいて、あと60kmなんだとか、30kmしかないということになる。そういうマインドは必要だよね。気負いなく、つらいのを楽しむ。

 

 

佐藤 FUJIを走ってみたくてエントリーしたのですが、お話をお伺いするまでは正直、ネガティブな気持ちの方が大きかったんです。やっぱり大変だろうな、長いんだろうなと思っていて。でも、それをも楽しむというのは初めて聞けた価値観だったし、お二人とお話してたら、早くFUJIに出走して、それを感じてみたいと思えました。装備を試してみたいのもそうだし、気持ちの面ではどのくらい苦しいのだろう? でも逆に乗り越えたらどのくらい気持ちいいんだろう! というのを知りたくなりました! ありがとうございました。

 

 

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