世界のトップトレイルランナーが集いNo.1を競う「GOLDEN TRAIL SERIES(ゴールデン トレイル シリーズ)」。2022年に日本で初開催となった「GOLDEN TRAIL SERIES NATIONAL SERIES(ゴールデン トレイル ナショナル シリーズ)」。2023年のジャパンシリーズは「中央アルプススカイラインジャパン」「THE 4100D マウンテントレイル in 野沢温泉」「白馬国際クラシック」の3大会でグランドファイナル出場を掛けた戦いが競われました。グランドファイナルはイタリアの北部、地中海に面した風光明媚なリゾートエリアで4日間に渡り開催。ジャパンシリーズのポイントランキング上位男女3名が世界最高峰のトレイルランナにー挑んだレポートをお届けします。
上野朋美選手[GTNSジャパン2023 女子3位]
当初、ゴールデン トレイル シリーズのグランドファイナルに自分が出場できるとは夢にも思っていませんでした。様々な偶然や運が重なり、チャンスが巡ってきたわけですが、実力・経験も他の代表選手と比べ不足している自分が本当に出場していいものかと最初は気後れし、悩んでしまいました。しかし、ベストを尽くして思いっきり楽しもう!とワクワクして臨めたのは、間違いなく喜んでくれた人や応援してくれた人たちの存在のおかげです。こうした素晴らしい機会をいただけたこと、周囲の人の支えがあって大会を迎えられたこと、とても感謝しています。
メインレースに先立って行われた8kmのプロローグレースでは、ウェーブスタートが組まれており、世界のトップ選手の走りというのを間近に感じました。遅れてスタートする世界のトップ選手に登りで何度も抜かれたのですが、彼女たちの呼吸はずっと後ろから声が聞こえるほど大きく、最大限の酸素を取り込んで力強く推進していく走りに圧倒されたのを覚えています。また、追い抜かす時に「come on come on」と他選手を引き上げるような声かけがあったことが印象的で、常に自分を鼓舞し、力を出し切ることに集中する気概が伝わりました。走力はもちろんのことですが、メンタル面での差も目の当たりにし、同時に気持ちの部分であればすぐに変えられる部分がある、と気が付くことができたレースでした。
1日空けて開催された26kmのメインレースは、走れる区間が多い一方、何度か現れる段差の大きな岩々の急斜面の登りが私はタフでキツかったです。普段であったらしんどくない範囲で登り続けようと力を緩めていたシーンも、プロローグでの他選手の走りを思い起こすと、まだ走れる、といつも以上に辛抱を続けることができました。最後は脚が攣りそうでヘロヘロになりながらのゴールで、走っている最中はただただしんどい感情ばかりだったのですが、終わってみるととても楽しかったです。結果は23人中20位と決して振いはしませんでしたが、最後までベストは尽くせたのではないかなと思います。
またこの大会を通じて、応援の力の大きさというのを強く感じました。どんなにしんどくても、周回ごとに通るメインステージでもらえる大きな声援には自然と笑顔になり、また補給でのサポートエリアや、コース上でチームメンバーに会えるたびに頑張れました。
高いレベルの選手ばかりが集まるレースに参加ができ、また日本のトップレベルの選手の皆さんと同じチームで過ごせたことには多くの刺激をもらい、もっと楽しむためにももっと強くなりたいと、そう強く感じた5日間であり、より一層トレランが好きになりました! これからも楽しみながらもっと走れるように続けていきたいです。
牛田美樹選手[GTNSジャパン2023 男子3位]
2022年は、GTNSグランドファイナル出場にあと一歩届かず、ランキング4位という結果でした。そのため、今年はなんとしてもリベンジして「グランドファイナルへの出場権を獲得する」ということを目標に約半年間、練習に励んできました。今年は昨年苦しんだ脚の故障にも悩まされず、コンスタントに練習に取り組めたおかげで、シリーズ戦で安定した結果を残すことができました。そして、最終戦の白馬国際クラシックでは運良く3位に入り、グランドファイナルへの出場権を手にすることができました。そこからファイナルまでの期間が1ヶ月半程度しかありませんでしたが、「日本代表として出場するからには最高のパフォーマンスを発揮してチームジャパンに貢献したい」と、やれるだけのことをやって最高の仕上がりでレースに臨もうと心に決めました。怪我や故障には細心の注意を払いつつ、スピードレースになることを想定し、スピードを強化する練習に重きを置いたトレーニングを行いました。やや膝には不安を抱えながらも、自分の中では「できることはおおむねやることができた」という状況でイタリアに向かうことができました。
大会会場のノーリの町は、海に面していながらも、山へもすぐ入れる環境にあります。標高こそ400m程度で、私が練習している足利の里山と同じくらいですが、崖の切り立ったところを走ったり、稜線から見下ろす町や海の景色が美しかったり、さすがはヨーロッパといった贅沢なコースでした。レース本番はもちろんのこと、サロモンの中村さんやカメラマンの三井さんとの試走も、とても楽しく、楽しみすぎてレース前としては走りすぎてしまったところは反省点です。ただ、事前にプロローグレースのコース、メインレースのコースの4ループ中3ループを試走できたおかげで、きついところやテクニカルなところ、スピードを出せるところなどがわかったのはレースをする上ではプラスになりました。また、ロストという不安も軽減させることができたのはよかったと思います。
結果としては、プロローグレースは、40分21秒でGTNS22位、総合57位。メインレースは、2時間29分56秒でGTNS22位、総合62位という結果でした。プロローグレースは、最後までプッシュし続け、力を出し切ることができました。メインレースは、プロローグレースの疲労と試走の疲労からか、それとも前半からガンガン攻めた反動からか、登りで脚が重く感じ、本来走れるところで走れなかったのが悔やまれます。しかし、最後まで気持ちを切らさずに1つでも順位を上げようとフィニッシュラインまで全力で走り切れたのはよかったと思います。前半の短い時間でしたが、世界のトップレベルの選手たちと競り合いながら走っていたときは、本当に楽しかったです!
最後に、正直なところ、年齢的にも日本代表として海外レースを走るのはもう難しいかなと思うこともありました。だからこうして再びチームジャパンとして世界の大きな舞台で走れたことを、本当に嬉しく思います。若い選手がどんどん力をつけてきて、年々国内のレベルは上がっていますが、この経験を無駄にしないためにもまだまだ挑戦し続けていきたいと思います。
今回の遠征にあたって、一緒に戦い抜いた代表の選手の皆さん、スタッフの皆さん、そしてサポートしてくださったすべての皆さんに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
石原菜美選手[GTNSジャパン2023 女子2位]
今回このゴールデン トレイル シリーズへの出場を目指したのは、「トレイルランニングで新しい世界を見てみたい」という思いからでした。日本ではさまざまなレースに出場していましたが、日本代表として海外レースに出場できるまたとない機会、世界のトレイルランニングの文化を体験してみたいと思い、日本での予選に参加し、イタリアでの最終戦への出場機会を獲得することができました。
実際にイタリアではたくさんの新しい世界を見ることができたと感じています。まずはトレイルランニングの文化です。レース会場はイタリア北部のNoliという小さな町ですが、駅をはじめ、町中の飲食店、ホテル、道沿いなどいたるところにレースの旗が掲げられ、町全体が一体となって大会開催を祝う雰囲気でした。またレースはプロローグレースと本戦を男女それぞれ1日1レースずつ、計4日間にもわたる贅沢なスケジュールが組まれていました。そしてレース中はマウンテンバイクのカメラマンが選手を追いかけ、その様子がゴール会場で中継されるなど、町を挙げて大会を応援する文化、大会の規模に日本との違いを感じました。
参加選手の雰囲気も新鮮でした。どの海外選手も、鍛え上げられた身体でまさに「アスリート」。着用しているウェアも斬新で、ブラトップでザックを持たずに走る日本ではあまりみないスタイルが印象的でした。レース中、抜かす際には、「Come on!(ついておいで!)」と声を掛けてくれ、その格好良さに感動しました。
自分自身の力においても新しい世界を見ることができました。これまでは、トレイルランニングは趣味の一環でしたが、今回参加するにあたっては、日本代表に恥じない結果を出せるよう今まで以上に練習を積みました。プロローグレースで見た、海外選手の大きな呼吸の仕方を本戦で真似ることで、いつもは辛く歩いてしまうような傾斜も走ることができたり、苦手意識のあった登りで前方の選手に追いつくことができたりしました。また一緒に参加する日本選手のアスリートとしてのプロ意識から学ぶことも多く、自身のレベルを上げるため、もっとできることがあると手応えを感じることができました。
日本でも、トレイルランニングを海外のようにさらに魅力的な文化にするため、今回得た経験を日本でも還元していきたいです。貴重な経験をさせていただき、関係者の皆さま、一緒に日本代表として戦った仲間には本当に感謝しています。またこの舞台に立つことができるよう、成長していきたいと思います。
田村健人選手[GTNSジャパン2023 男子2位]
今回は初の海外レースという事で、世界との差がどのくらいあるのか、世界の選手はどんな走りをするのか、色んな事を吸収して今後のトレイル人生に繋げようという気持ちで出場しました。プロローグ(8.7km)と本戦(26km)の2戦で行われ、獲得標高が少なく、走りやすいコースだったので、海外選手に食らいついていこうと思っていましたが、どちらも世界との壁を痛感しました。
特に上りで海外選手との差を感じました。同じ所を上ってるはずなのに、全くついていけず、悔しい思いをしました。
今後、自分の中で鍛えなければならない部分を見つけられたのは大きな収穫です。
初の海外レースでしたが、体調不良やアクシデントなく走れたのは非常に良かった点だと思います。 何が良くて、何が悪かったのか、しっかり分析して次のレースに生かしていきたいと思います。
今回は日本からA’Sホールディングス株式会社の社長夫婦やRETO RUNNING CLUBのメンバーが応援に来てくれたことが、1番力になったし、嬉しかった。今後も応援してくれる人のためにも結果で応えていきたいと思いました。
この文章は日本に帰ってきて1週間後に書いていますが、時差ボケが治らないのが本当に辛い(笑)。日本チームの皆には本当に助けられました。ありがとうございました。またどこかのレースで会いましょう! Ciao ciao
冨井菜月選手[GTNSジャパン2023 女子1位]
私は、今回が初めての海外レースでしたが、チームの皆さんと出場する事もあり、不安は全く無く、海外のコースや雰囲気、景色、海外選手の走り、様々な事を感じる事ができるのだと思うと楽しみでいっぱいでした。
プロローグのレースでは8kmのショートコースを走り、10km以下の短いコースを走ったことが無かったので、どんなペース配分で走れば良いか分かりませんでした。いざスタートすると、プロローグは速い選手時差で後ろからスタートするという方式で少しでも抜かされまいとガムシャラに走りましたが海外のトップ選手の登りが速すぎて本当に傾斜があるのかと思うくらいのスピードで何人かに抜かされてしまいました。
得意の下りで少しでも差を縮めようと走っていた時に、以前痛めた場所と同じ場所を捻挫してしまいスピードダウンしました。ですがアドレナリンで走りつづけ、ゴールした際に、ゴールの盛り上がりに圧倒され、痛みを忘れるくらい気持ちよくゴールする事が出来ました!
メインレースでは、最初の街のロードの区間から海外選手は速くて、レースを走りながらも、もっと地の走力をつけていかなければ戦えないのだと思いながらのスタートでした。
登りは全く歯が立たず下りは自分の中で自信があったものの、いざ走ってみると着いていくのに必死でトップ選手との力の差を実感しました。ですが、様々な場所での、応援の方が全力ではないのかと言うくらいの応援が気持ちをあげてくれて、キツイ部分でも頑張る事ができました! 街をあげての応援がさらに気持ちをワクワクさせてくれました!
いつもは走れているような下りや林道でもうまく走る事が出来ず、反省もありましたが、あの頂上で見た景色は一生忘れられないくらい綺麗で感動すると同時に、もっと強く速くなってこの場所、このレースに戻ってきたいと強く思いました。
ノーリは港町ながらも、トレイルコースは様々なsurfaceがあり、景色も日本の様な山の中だったり、海が一望できる開けたコースだったり走る事にワクワクする様な場面がとても多かったです。本当に刺激が沢山のとても楽しいレースを走る事ができました。
またレースだけではなく、食事会場までのヒッチハイクや日本チームのみんなでの食事、
時間が空いた際の街の散策、全ての時間が新鮮でとても楽しい時間でした。
このような機会をくださった、SALOMONの皆様、レースに出るまでにサポートしてくださった皆様、そして一緒に1週間戦いサポートし合い戦った代表の皆さん本当にありがとうございました!
今回のレースをきっかけに、沢山の刺激をもらい海外のトレイルレースや100マイルレースなど、色々な事に挑戦してみたいと思いましたし、今年から始めたトレイルランですがさらにトレイルが好きになりました!様々な分野で頑張りたいと思っています。
これからも応援よろしくお願いします。
くれいじーかろ選手[GTNSジャパン2023 男子1位]
ゴールデン トレイル シリーズは世界各国で行われるレースで競う【ワールド】、地域別で行われるレースで競う【ナショナル】とあり、今1番レベルの高いシリーズと言っても過言ではありません。ぼくは、そのゴールデントレイルのファイナルに昨年に引き続きナショナルチームとして参加してきました。
舞台はイタリアのスポトルノ。昨年は5日連続レースのステージレースでしたが、今年はプロローグとファイナルのレースでした。標高自体は最高350m前後なのですが、登山道も狭く、様々なサーフェス、そして今回はスタートとゴールを拠点として4ループするというコースでした。1ループ終わるたびに、とても沢山の観客が待つところに帰るのはとても楽しみでしたし、そこで一緒に戦った女子のメンバーがエイドサポートもしてくレルのもとても力になりました。
今年は昨年以上にレベルが高く、得意のロードで差がつかず登りで少し差をつけるも下りで追い抜かれるの繰り返しでした。トレイルランニングを始めて3年目で、以前よりも下りも苦手意識がなくなっていたのですが、世界の舞台に来ると明らかに差があると気付かされます。
今回このような機会を頂いたサロモンジャパンをはじめとするゴールデン トレイル シリーズの関係者の皆様ありがとうございました。またリベンジします。
【緊急告知】ゴールデントレイルワールドシリーズ、日本開催決定!
ゴールデントレイルワールドシリーズの日本開催が決定しました。場所は「兵庫県神戸市」! ワールドシリーズ第1戦として、アジアでは初、翌週の中国大会と共に新規大会として開催します。大会名は「神戸トレイル(KOBE TRAIL)。
大会詳細は、追って公開される大会サイトにてご確認ください。
■ゴールデントレイルワールドシリーズ
https://www.goldentrailseries.com/