UltrAspire(ウルトラスパイア)は、自身がアドベンチャーレーサーでもあり、ハイドレーションパックデザイナーのブライス・サッチャーによって、2011年にアメリカ・ユタ州レッドロックキャニオンの雄大なフィールドの広がるセント・ジョージをベースに創設されました。
UltrAspireの商品開発には、ブライス本人を含む14名のエクストリーム・アスリートからなる、スペシャルティランニングテスト集団 “The Elite Immortals” からの徹底的なフィールドテストによるフィードバックが反映されています。
常にアスリート視点で、最先端でレースに直結したデザインをコンセプトにし、軽量かつ使い勝手が良く人間工学に基づいて設計、無駄なく機能性と効率性を最大限に発揮できるようなミニマムデザインで、革新的なハイドレーションギアを生み出しています。
今回、創立者のブライス・サッチャー氏が来日、話をお伺いする機会を頂きました。
――UltrAspireを立ち上げる前はどんな仕事をしていたのですか?
1985年にULTIMATE DIRECTION(アルティメイトディレクション)というブランドを立ち上げました。1999年には売却し、NATHAN(ネイサン)にデザイナーとして2010年まで在籍していました。
――UltrAspireのポリシーを教えてください。
実際に走っているアスリートの声を大切にして、アスリートと一緒に商品づくりをしていることです。いわゆるトップダウンの開発ですね。トップアスリートの問題を解決するということは、結果的にその人を目標にしている一般のランナーの問題も解決できるわけです。
――近年はトレイルランニングがブームになってきましたが、それにともなって市場のニーズは変わってきましたか?
一番大きな変化はパックのサイズですね。トレイルランニングという競技がこれほどポピュラーではなかった時代は、大会でのエイドステーションの間隔が長かったので、それだけ多くの装備を運ばなければなりませんでした。その頃は走れるバックパッキングというイメージでした。現在はエイドステーションの間隔も狭く、スピードも増していますので、パックも小さく、軽くなっています。そして、エイドステーションでどれだけ早く補給をできるかというニーズに変わってきました。行動食も以前は普通の食べ物をパックに入れていましたが、今はエナジーバーやジェルなどが主流なので、ポケットのサイズなども変わりましたね。
北米ではより物を持たない傾向があります。ハンドヘルドのボトル1本とエナジーバーをポケットに入れて100マイルを走る選手もいます。ヨーロッパは高所のレースが多いので、装備の多くなります。必要なギアをどれだけ小さなパックに詰め込むかというニーズになります。また、ごく最近の北米では200マイルなどの長いレースで、エイドステーションの間隔も長く、ポールを持って走るという新しいニーズも出てきました。
――UltrAspireの商品の特徴を教えてください。
「ランナーが走ることに集中でき、それをサポートする事でより速く、より長く走れるようにするパック」をコンセプトにしています。このコンセプトのもと、身体に熱がたまり身体能力が下がるのを防ぐために身体に触れる面積を最小限にしたり、背面のメッシュ素材に低コストのナイロンを使うのではなく、ナイロン素材よりも速乾性と通気性に優れたマイクロファイバーポリエステルを使用したりしています。また、重心の位置は身体への負担を最小限に抑えながら足回りに安定をもたらし、ポケットの位置もパックを下ろす行為を最小限に抑えてくれ、走っている最中に無理な体勢をとらずとも素早く必要な物が取れる構造になっています。
――新製品のトピックスはを教えてください?
2015年モデルで最も特徴的なのは「MAXO2」というチェストストラップです。エラスティックの戻る力が強いので、選手の動きに対してきちんとフィットして、動きを妨げません。一度長さ調整をすると着脱はとても簡単です。取り付ける構造も新しいのですが、特にエラスティックの伸縮率にこだわりを持っています。弱すぎるとテンションがかからず、強過ぎるときつく感じてしまうので、その辺のバランスが大変優れています。
もう一つはショルダーハーネスにあるスウェットプルーフのポケットです。一見すると普通のポケットに見えますが、汗が染みてこない設計になっているので、錠剤などを裸で入れておける便利なポケットです。マグネットで開閉しますので、走りながら指を入れて手探りでも錠剤を探すことができます。一見すると地味な内容ですが、実際に走っているアスリートの声から生まれた機能なので、使ってもらえれば実感できると思います。
――リザーバーとボトルの使い分けについてお勧めを教えてください。
エイドステーションの間隔が長い場合はリザーバーが有利です。容量が多いし、コンパクトになります。しかし、ボトルと比べると美味しくないという欠点があります(笑)。また、急な坂を登っているときにはホースから吸うのが苦になることがあります。さらにエイドステーションでの補給に時間がかかりますね。ボトルは美味しく飲めて補給がすぐにできます。エイドステーションまで早くつけるならばボトルが有利ですね。
――パッキングについて日本のランナーにアドバイスはありますか?
食べ物と水分は取り出しやすいところにいれておくべき。僕は腕時計のアラームが20分おきになるように設定して水分と食料を摂るようにしています。ですから、エイドステーションまでの到着時間を予想して、60分なら3回分の補給食をポケットにいれておくようにしています。自分がどのくらいの水分が必要かを知るためにスエットレートテストしておくことをお勧めします。これは走る前に体重を計り、一時間走ってからまた体重を図って、どのくらいの水分が失われるかを計測します。この数値をもとに水をどのくらい持っていったらいいかを決めるのです。
――メンテナンスで気をつけることはありますか?
UltrAspireのレースベストは冷水で洗濯機で洗っていただいても大丈夫です。ネットがあれば入れた方がより良いです。洗剤も普通のもので問題ありません。乾燥機にはかけないで陰干ししてください。
――2016年以降の商品展開で教えていただけそうなことがあったらお願いします。
日本のマーケットにとっては大きなニュースになりますが、あるトップアスリートのシグネチャーモデルを開発しています。2016年春に間に合うよう開発を進めています
――それは楽しみです。ありがとうございました。
ブライス・サッチャー
Bryce Thatcher
アイダホ州レックスバーグ出身。Brigham Young University卒業。ULTIMATE DIRECTION、NATHANを経て、2011年にUltrAspireを設立。
■UltrAspire
http://www.ultraspire.jp/