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【HOKA Special Interview】宮﨑喜美乃 × TECTON X 2「世界で勝つために」

Tarawera Ultramarathon by UTMB(New Zealand)

 

2022年は「Ultra-Trail Mt. FUJI」(159km)と「Pirin Ultra」(ブルガリア・160km)で優勝。2023年も2月の「Tarawera Ultra Marathon by UTMB」(ニュージーランド・163km)で準優勝、4月の「Istria by UTMB」(クロアチア・168km)で優勝と順調な仕上がりを見せ、今後の活躍が期待される宮﨑喜美乃選手。高いパフォーマンスを維持する秘訣や今取り組んでいる課題、シューズに対するこだわりをお伺いしました。

 

2024年の 「UTMB Mont-Blanc」 で優勝を目指す

 

――2022年、23年とだいぶいい感じにコンディションを上げてきているようですが、今取り組んでいること、今後の目標などを教えてください。

宮﨑 今の目標は2024年の「UTMB Mont-Blanc」のUTMB(171km・フランス、スイス、イタリア)で優勝することです。そのため、2023年は海外の100マイルレースにどんどんチャレンジしている状況です。今年はすでに2戦終わっていて、この後のターゲットレースは7月の「Hardrock 100」(102.5マイル・USA コロラド州)、と9月の「UTMB Mont-Blanc」です。その他、いくつか招待を受けているレースに出るかもしれませんが、それはリラックスしたレースになると思います。

――今年9月の「UTMB Mont-Blanc」ではどのあたりを目指しているのですか?

宮﨑 今年は、まずトップ10入りを目標にしています。

――そのために、今はどんな課題に取り組んでいるのかを教えてください。

宮﨑 今は100マイルのレースをどうやってクリアしていくかがやっと見えてきたところだと思っています。しかし、自分が勝負レースと決めた大会で、2位とか3位に入ることはできても、なかなか優勝するのは難しいと思うんです。そこで、不足しているものは何かと考えると、やはりトップスピードが足りないということになるんです。そういうレース展開をたくさんしてきました。今までのレーススタイルは後半から攻めの走りをするという展開でしたが、今後は最初から先頭争いに食い込んで行けるように身体を作っていこうとしています。

――トレーニングで気をつけていることはありますか?

宮﨑 私はランニングのスピード練習を多く取り入れると怪我をしてしまうことが多かったので、今は自転車や低酸素でのトレーニングを取り入れて、路面からくる負荷を強くせずに心肺機能を高めるトレーニングをベースにしています。

 

Tarawera Ultramarathon by UTMB(New Zealand)

 

――自身が走ったレースのデータを分析していると聞きましたが、どんなことをしているのですか?

宮﨑 100マイルレースを走り始めた頃から心拍数を記録しています。自分はどのゾーンで走り続けることができるのか、という特徴を追いつつ、海外のトップ選手と争ったときに自分の身体がどうなるのか? どのゾーンが足りないのか? どういうふうに調整をすれば最後までペースを落とさずに走りきれるのかを考えています。

――ウルトラトレイルとなると胃腸のトラブルも多くなってくると思いますが、何か対策はしていますか?

宮﨑 しっかり食べて最後までペースが落ちないようにするために、最近は腸内環境を調べる検査をし始めました。それで身体の調子を随時チェックしています。食べたものを消化できる強い内臓を作ることが大事なのもわかってきました。一度ヴィーガン(完全菜食主義者)の食事にしてみたら、やはり自分は動物性の食事は取らないほうが身体の調子がよくなることがわかりました。今はヴィーガンというわけではないのですが、レース前後は動物性の食材は摂らないように意識しています。

――レース中の補給で気をつけていることは?

宮﨑 エナジージェルが苦手で私には合わないと思っていたのですが、最近自分に合うジェルを見つけたので、摂るようにしています。あとはフルーツ系を食べられるようにしています。それと大会にはビーツパウダーを持っていきます。身体の調子を保つのにいいんです。

――ちなみにエナジージェルはなんというブランドですか?

宮﨑 ニュージーランドの「PURE Sports Nutrition」です。

――なるほど、競技時間が長いので摂取しながらパフォーマンスを発揮するというのが大事ですね。

宮﨑 すべてが噛み合わないとうまくいかないですね。心拍ゾーンが高すぎるとうまく補給できなくなるし、普段の食事に対する注意を怠っていたら、心拍ゾーンを一定にしてもうまく走れないというところでつながってきますよね。

――積み上げたご自身の経験やデータを元に、ウルトラトレイルを走るためのアカデミーを運営しているそうですね。

宮﨑 はい、トレーニングの内容を伝えるというよりは、自分のデータを見てどう解釈するのかをお手伝いしています。私はもともと山の研究をしていて、その中で得意なのはウルトラトレイルなので、いかに効率よく走れるかを共有したいと思っています。つまり、頑張りすぎていたり、頑張っているつもりでいる人が、自分のデータを見みて客観的に判断できるようになればもっと楽しめるし、リスク管理にもなるということ伝えていきたいです。

 

 

100マイルレースではシューズ3足を使い分ける

 

――シューズはどんなタイプが好きですか?

宮﨑 私は下りが苦手なので、足と路面との接地が感じられて、しっかりグリップしてくれるシューズが好きです。HOKAのシューズで最初に気に入ったのが「ZINAL(ジナール)」でした。下りの安定性が抜群に良かったです。足裏の感覚がしっかりわかるので、とてもコントロールしやすいシューズです。ただ、100マイルのレースを走るならもう少しソールが厚いシューズを選びます。

――大会ではどのシューズを履いていますか?

宮﨑 比較的走れるコース設定が多いならカーボンプレートが入っていて反発力がある「TECTON X 2(テクトン X 2)」、テクニカルなコースが主体なら「MAFATE SPEED 2(マファテスピード 2)」、ロードや林道が多ければオールラウンドな「CHALLENGER 7(チャレンジャー 7)」を履くことが多いです。

 

Istria 100 by UTMB(Croatia)

 

――100マイルレースではシューズを履き替えることを前提に考えていますか?

宮﨑 レースや天候によりますね。「Tarawera Ultra Marathon by UTMB」のときは1足しか履かなかったけれども、クロアチアの「Istria 100 by UTMB」では3足履き分けました。

 

――レースで使用する3足の特徴をもう少し詳しく教えてください。

宮﨑 トレイルランニング用のシューズをロードで履くとグリップが強すぎて疲れてしまうことが多いのですが、「CHALLENGER 7」はロードの下りでグリップがマイルドなので脚への負担が少ないところが気に入っています。それと、シュータンが厚いので急な下りが続いて甲に圧が集中してしまいそうなときにも履きます。「MAFATE SPEED 2」はグリップがしっかりしていて、適度なクッションがあり、反発の強さもちょうどいいので気に入っています。「TECTON X 2」の特徴はやはりスピードを出せることです。カーボンの反発が強くて、かつ軽量でクッションもあるので、脚ができていれば長いレースでもいけます。しっかり走れるトレイルでは抜群ですね。

――「TECTON X 2」のようにカーボンプレートが入っているシューズは足にもそれなりの負担がかかると思いますが、100マイルでも問題ないですか?

宮﨑 距離というよりはスピードの問題ですね。100マイルでも脚の調子がいいときは「TECTON X 2」で問題なく走り通せます。ただ、身体の調子や脚の仕上がり具合が不安なときは「CHALLENGER 7」を選びます。

 

 

――ロングディスタンスで「TECTON X 2」を履きこなすためのポイントがあれば教えてください。

宮﨑 カーボンプレートの反発を活かすには、つま先で接地するのが条件だと思うのですが、100マイルのような長距離を走るとなると、ずっとつま先で接地していると足への負担が大きくなってしまうので、うまく調整する必要があります。

――具体的にはどうすればいいのでしょうか?

宮﨑 足の前1/3のつま先接地ではなく、足の2/3くらい、つま先より少し後ろも使って接地するようにすると反発も抑えられて、足への負担も少なくなってきます。ですから足場が不安定なところでは足裏を2/3まで接地できるスペースを探して走るといいと思います。

――なるほど、宮﨑選手が「TECTON X 2」で軽快に走っているときは、調子がいいということですね。今後の活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。

 

 

 

 

宮﨑喜美乃
みやざき・きみの 1988年生まれ、山口県出身。ウルトラトレイルランナー / 低酸素トレーナー。大学時代に行った富士山の研究をきっかけに大学院へ進学。登山の運動生理学の第一人者である山本正嘉教授の元、安全で健康的な登山をテーマに研究に勤んだ。今なお自身のデータを元に論文発表を行いながら、トレイルランニングの中でも100マイルを主戦場とするウルトラトレイルランナーとして、国内外の100マイルレースで活躍中。

主な成績
2015 STY(79km)優勝
2016 SPATRAIL(70km)優勝
2017 ASO Round Trail(109km)準優勝
2018  日本山岳耐久レース(64km)準優勝
2019 Oman by UTMB(170km)3位
2021
山陰海岸ジオパークトレイルFKT 230km 新記録樹立
LAKE BIWA 100(166km)準優勝
Thailand by UTMB(168km)準優勝
2022
Ultra-Trail Mt. FUJI(159km)優勝
Pirin Ultra(160km)優勝
2023
Tarawera Ultra Marathon by UTMB(163km)準優勝
Istria 100 by UTMB(168km)優勝

 

 

TECTON X 2
(テクトンエックス2)
・価格:¥29,700(税込)
・展開
Men’s(25.0–29.0, 30.0cm・1色・252g/27cm)ソールスペック:オフセット5mm/ヒール32mm/フォアフット27mm
Women’s(22.0–25.0cm・1色・211g/24cm)ソールスペック:オフセット5mm/ヒール30mm/フォアフット25mm
・カラー:Men’s Cherrie Jubilee/Flame Women’s Cherries Jubilee/Flame


■レビュー記事はこちら ↓ ↓ ↓

【Review】HOKA「TECTON X 2(テクトン エックス 2)」

■HOKA https://www.hoka.com/jp/

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