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【Salomon back pack history】トレイルランニングシーンを変えたベストパック

キリアンザックから始まったトレイルランニング界の革命

日本初の100マイルトレイルレースは、2012年に開催されたUTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)。富士山の周りを一周するこの大会は、今も日本で最も有名であり、海外のランナーからも注目を集めています。

2012年5月、記念すべき第1回大会の取材に河口湖(山梨県)を訪れた時のこと。

いつもとは少し違う光景に驚きを隠せませんでした。
「Salomon(サロモン)のバックパックを背負った選手が激増している!」
データは取っていませんが、すれ違う選手達を見ているだけでそう感じたのですから、よほどの割合を占めていたのでしょう。

当時、Salomonはもちろん誰もが知るトップブランドではありましたが、バックパックのシェアは、そこまで圧倒的だったわけではありませんでした。では、なぜ急にユーザーが増えたのでしょうか? それはベスト型のバックパックが評価されたに他なりません。

日本の100マイルの幕開けとなった年は、ベストパック時代の幕開けの年でもあったのです。

プロトタイプのベストパックを掲げるキリアン・ジョルネ。

Salomonは2011年に「XT ADVANCED SKIN 5 S-LAB SET」をリリース。当時、Salomonのアスリートだったキリアン・ジョルネ(スペイン)が大活躍したこともあり、通称「キリアンザック」と呼ばれました。

ショルダーハーネスからメインコンパートメントまでが一体化したベストパックはフィット感が劇的に向上しました。しかし、容量が5Lだったこともあり、ロングレースでチョイスされることは少なく、まだまだレアな存在でした。

2011年発売の「XT ADVANCED SKIN 5 S-LAB SET」通称、キリアンザック。

ところが、2012年、Salomonは一気にラインナップを拡大。「ADVANCED SKIN S-LAB SET」(12L・5L)「SKIN PRO」(14+3L・10+3L・3L)の5モデルとなり、一般レーサーがウルトラディスタンスに必要なサイズが出揃いました。このため、UTMFに出場する選手達が飛びついたのです。

2012年発売の「ADVANCED SKIN S-LAB 12 SET」(左)と「SKIN PRO 14+3 SET」(右)。

ベストパックが登場するまで、トレイルランニング用のバックパックは、登山用のパックを小さくしたようなデザインでした。ショルダーハーネスとウエストベルトで身体に固定していましたが、サイズが小さいため本来腰骨に巻き付けて固定するウエストベルトは柔らかい腹部に巻かれていました。これが安定感不足と身体への負担になっていました。

ベストパックが登場する以前のSALOMONの主力商品

また、ランニングの姿勢は歩行に比べると重心位置が前寄りになりまるため、バックパックも少し前よりに重量がかかる方が効率が良かったのです。Salomonは、この二つの問題を解決して、圧倒的な安定感を生み出しました。

❶ソフトでストレッチ性のある素材で、肋骨、肩甲骨のみでパックを支えるため、呼吸を妨げない。また、ベルトなどで消化器官などの内臓を圧迫することもないため、ランニング中に最大の動作性を提供する。
❷パック全体が背骨上部にフィットする構造で上半身を自由に動かせる。 ❸(イラスト左)一般的なバックパックは重心が身体から離れ重力がかかる。(イラスト中)Salomonのベストパックは身体の中心に自然に重さを移動。(イラスト右)行動時は荷重の重心が身体の自然な中心と一直線になり安定する。

第1回UTMFでは男子1位、女子1、2、3位の選手がSalomonのベストパックを着用していました。ちなみに女子の2位は日本の鈴木博子選手で、彼女は翌年も5位になっています。

2012年UTMF、(写真左)男子1位のジュリアン・ショリエ、後ろは2位のアダム・キャンベル。(写真中)女子優勝のネレア・マルチネス・ウルソラ。(写真右)女子2位の鈴木博子。

ベストパックの先駆者として確固たる地位を築いたSalomonですが、実はもう一つ大きな変革をもたらしました。それはハイドレーションシステムです。

2012年に発売されたキリアンザックは、フィットの面で革新的でしたが、ハイドレーションシステムは背面のリザーバーからチューブで供給する方式でした。ショルダーハーネスにはポケットがありましたが、ジェルなどを入れる程度にとどまっていました。

2013年に「SOFT FLASK 500ML」を発売。2014年以降にはベストパックに付属する1.5Lハイドレーションパックが、徐々にソフトフラスクに置き換わっていきました。

フロントにソフトフラスクを装備すると、補給が楽にできること、残量がわかりやすいこと、重量が前後に分散されてバランスが良くなること、メンテナンスが楽なことなど、多くのメリットがありました。

ソフトフラスクを収納し、フロントポケットの数も増え、ますます使い勝手が向上。

また、この頃からフロントとサイドに大きなポケットが増え、背面にも手が届くポケットができるなど、ベストパックを降ろさずに多くの装備にアクセスできるようになりました。その後、プラスチックのパーツはどんどん少なくなり、よりしなやかに進化していきます。

2014年発売「S-LAB ADVANCED SKIN HYDRO 12 SET」(左)と2019年発売の「ADV SKIN 12」(右)

こうして現在のベストスタイルが築かれてきたわけですが、その多くの部分を牽引してきたのがSalomonだったのは間違いありません。

 

Looking back on history of Salomon

元サロモンアスリートで、現在はルナークス・ランニング・カンパニーの代表の佐藤英人さんは、こう振り返ります。

当時、Salomonと言えば「スピードクロス」や「XA PRO」など、シューズが中心のブランドというイメージでした。ところがキリアンザックが登場してから、一気に流れが変わってバックパックでも先頭を走るブランドになったという印象がありましたね。

キリアンザックは、あっと驚くフォルムでしたが、とても理にかなっていると思いました。背負い心地が一気に変わってしまったのはとても衝撃的でした。もう、バックパックというカテゴリーではなく、ウェアに近い仕様なんですよね。一度背負うともう以前のタイプには戻れないほどでした。このタイプは間違いなく主流になると思いました。

Salomonベストパックはしばらく飛び抜けた存在でしたが、他社もだんだん追いついてきました。それでも、Salomonはやはりトップを走っています。現行のSalomonのベストパックの一番の特徴はしなやかさ。服のように身体にとフィットするので、当たりが出にくいです。さらに、メインコンパートメントもストレッチ性があるので装備を詰め込むことができます。パンパンに入れても、揺れが少ないのはさすがの完成度。元祖ベストパックの風格を感じますね。

佐藤英人 ランニング・スペシャリティショップ「ルナークス ランニング カンパニー」(埼玉県川口市)代表。陸上競技、トライアスロン、自転車競技、トレイルランニング、フルマラソン、アドベンチャーレース、エクステラなどさまざまなエンデュランススポーツをこなすマルチアスリート。レース運営や指導も行う。「RUNARX」を立ち上げる前はSalomonアスリートとして活躍していた。
・ルナークス ランニング カンパニー https://www.runarx.jp/

2022年には、さらなる進化を遂げた「ADV SKIN」が登場。すでに完成の域に達した感があるようにも見えるベストパックですが、意欲的に新しいことに挑戦し続けるのもSalomonの魅力です。

この先、どんなブレイクスルーが待っているのか、期待は高まるばかりです。

2022 NEW MODEL

ADV SKIN 12
・価格:¥18,700(税込)
・サイズ:MEN XS-XL、WOMEN 2XS-L
・カラー:MEN 4色、WOMEN 2色
・寸法:40 x 19 x 1
・容量:12L
・重量:293g(本体)
・500mlソフトフラスクx2付属

■商品レビューはこちら↓↓↓

【Review】Salomon「ADV SKIN 12(アドバンスドスキン 12)」

ADV SKIN 5
・価格:¥16,500(税込)
・サイズ:MEN XS-XL、WOMEN 2XS-L
・カラー:MEN 4色、WOMEN 2色
・寸法:38 x 19 x 1
・容量:5L
・重量:249g(本体)
・500mlソフトフラスクx2付属

Salomon 75th Special Contents

【Salomon SPEEDCROSS history】生き続けるのは、山岳レースの限界を超えるためのDNA

【Salomon shoes history】常に革新的なシューズを送り出し、時代をリードし続けるトップブランド

【Salomon S/LAB history】革新的なハイパフォーマンスプロダクトレーベル

■Salomon:https://salomon.jp/
■explore Salomon:https://explore.salomon.jp/

 

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